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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(39)
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2013年5月 1日 07:00

<経営会議(38)>
A-3.jpg 続いて谷野は、
「いよいよ今日最後の議案であります第5号議案に入ります。第5号議案ついては、小林取締役より説明をお願いします」
 と述べると、小林取締役は、
「第5議案については、現状のところで申し上げますと、6月の株主総会終了の時をもちまして、退任が決まった取締役会長栗野和男氏に対して、在任の功労に報いるため当行の定める規定に従い、退職慰労金の贈呈の件を提案するものです。なお、具体的な時期、金額、方法などについては、取締役会に一任いただきたいと思います」
 と説明をした。
 それを受けて谷野は、
「私および大沢監査役の再任については動議が提出されましたが、いずれも過半数には達しなかったため、再度取締役会議の採決に持ち越されることになります。取締役会議で両名の再任が認められない場合においても、取締役会および監査役会に一任いただきたいと言うことをお諮りするものです」
と述べると、出席者全員から「異議なし」の声が上がった。
 議長の谷野は、
「有難うございました。第5号議案については従来の規定に従って退職慰労金を贈呈するということにしたいと思います」
 と述べた。
 11時に終了を予定していた経営会議は、沢谷専務による谷野頭取の退任を求める動議が提出され、守旧派と改革派との激しい論戦が展開され、大幅に予定の時間を過ぎていた。
 最後に谷野は、
「先ほど言いかけましたが、経営会議が長くなり、正午から開催予定の臨時取締役会の開催時刻を20分遅らせ、12時20分より始めたいと思います。以上で経営会議を終了致します」
 と、11時45分に閉会を宣言すると、谷野は会議場を追われるように退出していった。
 一方、沢谷専務を筆頭とする守旧派のメンバーは、オブザーバーとして出席していた谷本相談役や松葉杖を突いて出席した栗野会長に向かって深く一礼して会議場を後にした。

 堀部は6階の西側にある応接室で経営会議を終わるのを待っていた。11時45分に経営会議が終わると、参加していた役員達が会議場を退出する足音が聞こえて来た。すると水田秘書室長が、
「今経営会議が終わりました。12時20分から取締役会議を始めますので、宜しくお願いします」
 と堀部に伝えに来た。
 経営会議での攻防も含め何も知らされていない堀部は、午後の取締役会議の場で守旧派が決行する「谷野頭取交代劇」(クーデター)を目の当たりにすることになる。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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