九州電力が過去最大の赤字を計上し、危機的な状況について瓜生道明社長を先頭に全社が認識をあらたにしたことだろう。
九州電力が4月30日発表した2013年3月期決算概要(連結)によると、経常収益は15,601億円(前期15,219億円)とやや持ち直したものの、純利益は3,324億円の赤字(前期1,663億円)となった。主たる原因は火力発電所に用いられる燃料費が高騰しているためだという。燃料調達コストを吸収し、経営状態を改善するため、5月より電気料金を一部値上げすることも併せて発表された。一般家庭(規制部門と言われる分野。公益性が高いため値上げには国の許可が必要となる)では5月1日より平均6.23%の値上げが実施される。
これによって収益体質は多少変化するだろうが、千億円単位の赤字を出してしまっていたならば、焼け石に水、ともなりかねない。
九電は今、まさに米びつの底が見えてきている状態である。それをいかに打開するべきか、もしくは9電力にかわる新たな枠組みを模索するべきか、今、問われている。早急に判断しなければ、電力の安定供給という、先進国としてまったく当たり前のことが危機にさらされることになるのである。
九電に残されている純資産は1,015億円。資本金と法定準備金が3,277億円。合わせて4,292億円が最後の砦なのである。これを守りきるか否か。もう、このような決算を迎えるわけにはいかないのは誰の目にも明らかだ。
<「原発再稼働による打開」は夢まぼろし>
九電は4月15日、夏季賞与の支給見送りを労組と妥結した。ようやく危機的な状況にあることが理解できたのだろう。ここから、九電の本気が見られるように感じられる。
原発を動かせれば打開できる、というのは夢まぼろしである。原発は動かせない。動かしたとしても事故が起こればすべて水泡に帰す。ならばどうするか。地域経済の雄として君臨し続けてきた九電。ぜひ、その底力を見せてほしいと思う。電力会社のあり方が今まさに問われている。
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