<全国百貨店は10年で2兆円の減収>
百貨店が苦戦している。ピーク時の1991年度に9兆7,000億円と10兆円近い市場を構成した百貨店業界だが、毎年、日本百貨店協会が発表する全国の百貨店の売上高は、ほとんどが前年比マイナスという発表ばかりだ。かつての小売業の花形の職業である百貨店業界では、芳しい話がほとんど聞かれない。
2012年度の同協会が発表した全国百貨店の売上高は6兆1,558億円と、10年前の02年度の8兆3,446億円と比べ、2兆1,888億円減、26.2%減となった。百貨店業界が衰退した背景にはモータリゼーション化が進み、郊外の商業施設に客足がシフトしていることが主に指摘される。更にはデフレ景気によって商品の低価格化が進み、ディスカウントストアおよびドラッグストアなどの新興業態の台頭もあるが、全国的には郊外型の店舗に売上シェアを多く奪われている。流通業界では各都道府県の郊外に大型複合商業施設「イオンモール」を運営する業界最大手のイオングループ(本社:千葉県千葉市美浜区、岡田元也社長)の成長と共に百貨店業界が衰退しているといった見方もできる。下記の数字を見て頂きたい。
<イオングループに追い抜かれる日も遠くはない>
全国百貨店売上高は10年間で2兆1,888億円も減少したが、イオングループは逆に10年間で2兆2,888億円も売上高を増やしている。百貨店の減少分がそっくりそのままイオンに流れているとは考えにくいが、モータリゼーション化が進むなかで、消費者が都心部から郊外へ流れていることを示す指標ともいえる。
イオン(株)は今年4月11日に発表したグループ連結売上高は13年2月期に5兆6,853億円となり、12年度よりも4,620億円増収となった。まさに売上高6兆円も目前となり、数年後には全国の百貨店売上高を追い抜くのは、ほぼ間違いないだろう。
九州に目を向けてみたい。福岡市は、11年3月に博多阪急が新規開業した影響もあり、12年度の売上高は1,951億円と08年度の1,898億円よりも50億円以上増え、4年前比で3.17%増となった。しかし、福岡市を除いた九州地区(福岡市を除く福岡県と九州各県、沖縄県を含む)は12年度の売上高が3,280億円と、08年度の4,022億円と比べ4年間で742億円も減少している。2011年7月には博多大丸長崎店が閉店したほか、今年3月には長崎の浜屋百貨店が大村店を閉店した。11年1月には宮崎県都城市の大浦(株)(都城大丸)が民亊再生法の適用申請を行なうなど、いくら時代の流れとは言え、「百貨店が潰れる時代が来るとは」と落胆した人たちも多いだろう。
九州の百貨店では、かつて大分の百貨店のトキハが中興の祖とも言われた故・上妻亨氏によって一時代を築き、ピーク時の2002年2月期に売上高786億1,200万円、子会社のスーパー・トキハインダストリーが03年2月期に売上高463億7,507万円、両社合わせて約1,250億円を計上し、大分県代表する小売業として君臨していた。
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