<取締役会議(2)>
会長や頭取など、取締役11名が出席する維新銀行の最意思決定機関である経営会議に続き、午後12時20分から始まる取締役会議には、執行役員的な取締役4名が新たに出席する。松木隆司は取締役東部支店長、堀部正道は取締役常盤支店長、大島俊之は取締役本店営業部長、原口俊也は取締役福岡支店長で、傘下の支店を統括していることから母店長の名称があった。
臨時決算取締役会議は、午後1時から開催することになっていたが、昨日になって秘書室長より、1時間早めて12時から開催すると急遽時間変更の連絡が入ったことも、堀部に「何かあるのではないか」と、予感させる一つの要因でもあった。
いよいよ栗野会長が議長となって始まる取締役会議は取締役選任を巡り、改革派と守旧派との激しい論戦が展開されることになる。
ここで取締役会議に出席する人物について改めて説明をしておきたい。
この場面での主人公である取締役常盤支店長の堀部正道は、守旧派で安芸本部長の北野俊弘常務、営業本部長の川中隆史常務と海峡西高の同級生で、川中はS大学卒業後維新銀行に入行。堀部は北野より1年遅れてD大学を卒業し、維新銀行本店営業部に入行。3人共に谷本亮二本店営業部副支店長(後に本店長)の下で、一緒に仕事した経験を持つ。
その後川中は組合の書記長、北野は組合の委員長を歴任し、共に植木頭取の後を襲った谷本頭取の指名により1998年6月取締役に就任。堀部も同じく谷本頭取の指名により2001年6月取締役となり常盤支店長に就任した。
維新銀行では谷本が頭取に就任してから、谷本と同窓のS大学卒業生か、組合の幹部出身者か、人事部長経験者でないと取締役になれないと、行内や取引先からも喧伝されるような人事が発令されるようになっていた。そんななか、そのどれにも該当しない、たたき上げの営業マンから取締役に登用されたのが一匹狼的存在の堀部であった。
谷野が、『常盤支店長の堀部取締役には頭取更迭の動きは知らせないようにしよう。取締役会議での彼の態度表明こそが、維新銀行の良心を代弁するバロメーターだ』と述べたのは、まさに堀部に『天の声』を委ねたとも受け取れる発言だった。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
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