年間約600万人の観光客が訪れる日本有数の観光地である沖縄県。2011年度は東日本大震災の影響で減少傾向となったが、同年10月以降は増加傾向にある。同年7月から中国人に対する数次ビザの発給のスタートをはじめ、アジア各国との航路も本数が増加している。"(株)沖縄県営業部"として、沖縄の魅力的な観光を国内外に売り込む仕掛け人である(財)沖縄観光コンベンションビューローの安里繁信会長に話をうかがった。
<苦難を乗り越え追い風に>
――沖縄は修学旅行や団体旅行も多く、旅行代理店が企画するキャンペーンが目立ちます。ここ10年間の観光客の推移などについてお聞かせください。
安里 2000年にサミットが開催されるまで順風満帆でしたが、翌年9月の同時多発テロが発生した際に「沖縄に基地があるから沖縄が危ない」と、風評が流れ、修学旅行客を中心に団体客のキャンセルが相次ぎ、観光客数に影響が出たことがあります。その後、「だいじょうぶさー沖縄」キャンペーンを実施し、回復傾向になりました。08年9月のリーマン・ショックの際も多少影響を受けましたが、現在はほぼ横ばいで推移しています。
今日現在、航路はLCC(格安航空会社)の新規参入もあり、国内外から多数の観光客が訪れています。我々にはフォローの風が吹いており、今年は"沖縄観光ビッグバン"と題し、台湾、香港、韓国に、プラスアルファで欧米諸国からの観光客誘致に力を入れています。
――中国の尖閣諸島の政治的な問題もあり、観光客の足に影響が出ているとみられますが。
安里 政治的なカントリーリスクは肌身感じていますが、観光客の95%は国内、そのうちの半分は羽田発の集客になっています。中国をはじめとした海外はわずか5%しかありません。沖縄県の観光要覧によると、最も多いのが台湾の約11万5,000人、続いて香港の約4万9,000人、韓国の約2万3,000人。中国の約2万人となっております。
しかしながら、01年の同時多発テロの時の落ち込みは相当なものでした。対前年比で修学旅行生が500校減、人数換算で10万人減となりました。その後、学校説明会等で全国を回り、沖縄の現状を伝えるなどの施策を展開したところ、翌02年度は入域観光客数全体で約2万人減に止まり、テロ前の2000年度の実績に近い数字に回復した経緯があります。
11年3月11日に東日本大震災が発生し、東日本の機能が低下しているなか、この先の未来、そして今、こういう時期であるだけに、今後、この地の利を生かした沖縄の観光のポテンシャルの高さをPRしていきたいと思ってます。
沖縄の観光は7~8割がリピーターで構成されていて、毎年数字が微増となっています。これから沖縄に行ったことがない方はもちろん、スポーツ交流イベント、各種団体の全国大会を誘致していきたいですね。
――今、旅行の多くは着地型旅行(旅の目的地に所在する旅行業者が企画)が主流になってきていますね。
安里 そうですね。我々は着地型旅行でも、今までにない観光の商品化に力を入れています。安心安全は当たり前、これにワクワクどきどきをプラスして観光=感動=町づくりと連動するような住民の意識が商品になるということに気付きました。「呼んで良し、暮らして良し」でないと誰も来たくないでしょう。故郷を誇りに持ち、故郷をセールスできるような意識づくりが大事だと思います。今後は人材育成の観点からも取り組んでいきたいと思っています。
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