太陽光発電のメリットは、メンテナンスフリーと言われてきた。一度、モジュールをセッティングしてしまえば、後は雨風が汚れを洗い流す。電力の供給も自然体なら、メンテナンスも自然の力に委ねられるというわけだ。しかし、20年以上も付き合っていく商材に、人の手をかけずにいられるものだろうか。人は環境ビジネスにどのように向き合っていくべきか。ファブスコ（株）代表取締役社長の江藤邦彦氏に話を伺った。

＜ゆりかごから墓場まで誠意を持ってお付き合い＞
　――太陽光発電ビジネスを始めてまだ一期目ですが、現在アフターメンテナンスに力を入れるそうですね。

　江藤　ええ、販売して終わるのではなく、ソーラーパネルを通じてお客さまと20年間お付き合いをさせていただくつもりで、二次メンテナンス、管理から保守までに注力していきたいと考えています。ゆりかごから墓場まで一貫してお世話をさせていただく、という心構えです。このような業者さんは、ほかにはいないのではないかと自負しています。

　――震災と原発事故以降、急速に普及したため、業界ではメンテナンスの面がおろそかなまま現在に至っているような気がするのですが。

　江藤　おっしゃるとおりですね。大手の企業さんですら、保守の面では戸惑いを感じ、弊社に相談されます。お客さまも、２、３社相見積もりをとって比べるなかで、私たちが設置後までちゃんと面倒を見るとお約束して始めて保守の必要性に気づく、といった按配です。業界への理解が、まだ追いついていないという感じですね。最近はきちんと勉強され、メンテナンス事業も手がけたいと考える企業さんが増えていますが、ノウハウがないので実行できない状態のようです。ただ、もともと太陽光発電の世界は、メンテナンスフリーを商品の魅了の１つとして掲げていましたので、業界の意識が立ち遅れたのも当然と言えば当然なのですが。
　しかし太陽光ビジネスのような商材は、市場の拡大と同時に収束時のことも見越しておく必要がある、と思っていますので、長期の見通しを立てて動かない企業には、不安を感じます。

　――ところで、保守メンテナンスとは、具体的にどのようなことを行なうのでしょう。

　江藤　一番は発電の管理です。発電が低下するダウンタイムが発生すれば、電力売買で収益を上げられません。ましてや発電停止、つまりタイムアウトしてしまうと、著しく状況が悪化してしまいます。未然に防ぐには徹底して点検し、早期発見に努め対処させていただきます。よくモジュールの架台は錆びないと思われている方がいらっしゃいますが、金属ですからどうしても錆は出ます。どの鋼板メーカーも以前は「錆びない」と謳っていたのですが、最近は「さびにくい」という表現に変わりましたね。風雨に晒された金属を20年も錆びない状態に保つというのは、難しいですよ。

　また、パネルの表面、汚れの洗浄、清掃も重要です。先日、受注した某メガソーラーシステムを見学したのですが、設置中にも関わらず、すでに鳥の糞などによってパネルが汚れていました。これでは正常に発電できません。モジュールは年々ケアをしていかないといけない商材であるということを、皆さん、認識していただければと思います。

　その他、発電の監視も重要ですね。お客さま方もご自分でチェックをされるでしょうが、パネルの回路までは確認できません。私たちは適時、モニタリングを行ない、著しく消耗している回路を発見すれば、いち早く駆けつけます。このようなアフターフォローを年間単位で契約し、年に２回保守メンテナンスを行ないます。
　他社のメンテナンスの場合は、まず設置業者の方に点検をしていただき、私どもはバックチェックで煩雑な部分を発見していきます。

　――販売と管理の比率はどのように考えていらっしゃいますか。

　江藤　ここ２、３年は、販売、卸売り、そしてメンテナンスと、３事業に分けて考えています。それぞれに売上金額の差は出てくるでしょうが、仕事のウェイトとしては１つの目安となっています。５年後くらいに、業界のバブル状態も落ち着いてくるでしょうから、それまでに新しい事業展開を考えるつもりです。いずれにしてもアフターフォロー事業は継続させ、安定した収益を上げられるようにし、１つの柱にしたいと思っています。
　この業態は管理と言うと居心地が悪いし、メンテナンスでは単なる修繕やという感じがします。アフターサポートというのが、一番相応しいでしょうか。前職がヤナセの販売営業だったこともあり、お客さまをサポートする、という気持ちを常に持っていますから。

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