<長閑な日向灘戦線>
次に想定されている『南海トラフ地震』の高波による致命的な被害を受けるのは、宮崎県、高知県、三重県、静岡県の海岸線沿いと言われている。弊社ではこの4県の海岸線沿いを、総力をあげて取材した。まずは、日向灘海岸からの報告を始める。大隅半島の付け根の志布志市から宮崎県の海岸線を北上し、大分県佐伯市までの走行距離は300kmにもおよんだ。
<まるで危機感のない宮崎県は県民体質丸出し>
(1)明暗分ける鹿児島県志布志、宮崎県串間市
まず、志布志港は、食糧輸入基地として有名である。この港は『南海トラフ地震』の高波に直撃される。港に囲まれた集落は、ほぼ壊滅状態になる。ただし、近くに高台があるため、スムーズに避難できれば、住民は危機から免れることはできるだろう。
一方、志布志港に隣接している串間市の港である福島港などは、救われる可能性が高い。なぜならば、都井岬に守られるからだ。野生に育っている都井岬の御崎馬たちには被害はおよばないと見る。
(2)猿の楽園・幸島危うし
知恵の進化研究対象になっている『猿の楽園・幸島』も直撃を受ける。猿が島の高いところに逃げていれば助かる可能性もあるが、前途は多難とみる。隣接している風光明媚な『恋の浦』への影響を予測すると、完全に海岸線は消滅する危険性が高いとみる。
(3)鵜戸神宮は大丈夫、油津港は壊滅
次に北上すると、宮崎県の有数の港・油津港がある。この港も津波の打撃を受けて、崩壊の危機に立たされる確率が高い。住民も、内陸部の飫肥地区へ逃げる訓練が大切だ。
その北横にある鵜戸神宮は、日向灘に直面している。高さ30m以上はある突端の防壁壁があるため、カバーしてくれて、危機からは脱することはできるであろう。ただし、鵜戸港が全滅することに関しては、覚悟がいる。
(4)青島は一時的に水面下に、近隣港もアウト
熱帯植物が群生している青島は、津波が襲来した際には、一時的には水面下に沈むであろう。島の植物がその塩害に耐えられるかどうかで、青島の存続そのものが問われる。隣接した青島港、内海港などは壊滅の恐れあり。
(5)宮崎空港は機能麻痺、宮崎市は小打撃か
宮崎空港は、日向灘に面している。直撃すればターミナルの被害が予想されるが、それよりも何よりも、滑走路への打撃は最悪となろう。復旧までには相当の時間を要すると見られる。空港地区の住民たちも、西側の高台に逃げる訓練が重要だ。宮崎港は、港湾の機能がマヒすることは間違いない。
都市中心部への影響は、大淀川に高波がどう侵入していくかで局面が変わる。中心部への被害は軽微で済むことを願望する。願望と言えば、一ツ葉海岸の松林が生き残ることを祈るばかりだ。
(6)宮崎県中央部の被害はいかに
高鍋・小丸川には、怒涛のように津波が襲いかかることが予想されるが、長年、築き上げられている防波堤で、防御は可能のようだ。海岸線沿いの集落は、すぐに逃げることで人的被害は食い止められる。川南港と都濃港はほぼ壊滅。川南港の裏手は台地が広がっているので、早く逃げることだ。
(7)神武天皇の御船出の美々津港は全滅
2673年前に神武天皇が討伐に向けて出航されたのが、美々津港である。その出発点が立岩神社であることは周知のことだ。この耳川の河口から大津波が来れば、由緒ある立磐神社が崩壊するのは確実だ。神武天皇がお座りになられた「神武天皇御腰掛の岩」は、大丈夫であろうか!!
(8)宮崎北部リアス式海岸線、足摺岬のおかげで被害が食い止められるかも
延岡市から大分県佐伯市にかけては、80kmにわたるリアス式の海岸線が続いている。今まで、交通の便の悪さから観光客が少なかった。ただ地元の人々は、この自然の美しさと海の幸の豊かさを堪能されてきた。現在、工事中の東九州高速道路が開通すれば、観光客が増大するのは確定であろう。
取材の当初、「その自然観光に恵まれたリアス式海岸で、『南海トラフ地震』の甚大な被害が続出するのか」と懸念していた。たしかに、延岡市中心部を超えて北上した海岸線に至るところに、釣りや海水浴に相応しい場所が多くあったのだ。熊野江、北浦・古江港、そして大分県佐伯市・蒲江港などに接すると、鳥肌が立つほどの自然の魅力が満ちあふれていた。ところが、幸いなことを発見した。この地区は、高知県足摺岬よりも緯度が高いのである(北の方にある)。「足摺岬が防波堤になる可能性がある」ことに気づいたのだ
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