ゴールデンウィークの開幕早々、前代未聞のニュースが飛び込んできた。家電量販店最大手のヤマダ電機は4月30日、創業者の山田昇会長(70)が6月27日付で社長に復帰する人事を発表した。一宮忠男社長(57)は副社長に降格。両氏以外の14人の取締役は執行役員副社長が執行役員専務に、執行役員専務が執行役員常務に、執行役員常務が上席執行役員と一段階下げる。会長は空席とする。薄型テレビの販売不振が続き、業績が急激に悪化。2013年3月期の株主配当は当初の予定より16円少ない60円(前の期は76円)と上場後、初の減配。取締役全員の降格で責任を明確にするという。
<営業利益は期初見通しの3分の1>
ヤマダは4月22日、13年3月期通期の業績見通しを下方修正した。連結売上高は1兆7,180億円から1兆7,040億円(前期比7.2%減)へ。営業利益は573億円から330億円(同63%減)、当期利益は340億円から220億円(同62.3%減)へと、それぞれ引き下げた。
13年3月期の期初の時点では、本業の儲けを示す営業利益は925億円(前期比4%増)と増益を見込んでいた。ところが、家電不況が想定以上に深刻なため、昨年11月時点で営業利益見通しを573億円へ下方修正。さらに今回、330億円に大幅な減額した。
家電エコポイント制度と地上デジタル放送移行にともなう需要の先食いでの反動減により、薄型テレビやレコーダーなどの映像機器関連の販売不振が続き大幅な減益になった。家電市場の低迷は想定をはるかに超えた。このことが、山田会長の読みをことごとく狂わせた。
<シェア拡大を狙い小型店戦略に転換>
ヤマダは10年3月期に売上高2兆161億円と、初の2兆円を突破。山田会長は「国内の年商3兆円、シェア3割を達成する」ことを経営目標に掲げた。ヤマダは、それまで、都市型店舗の「LABI」の出店に力を入れてきた。都市攻略の狙いは、ヨドバシカメラやビックカメラなどの「カメラ系量販店つぶし」にあったが、倒産に追い込まれたのは「さくらや」ぐらいだ。
都市攻略に向けた出店は、11年の東京・新宿西口や名古屋駅・広小路口(名鉄百貨店ヤング館跡)への出店で、ひとまず一巡。次に打ち出したのが、シェア3割を達成するための小型店戦略だ。
その1号店が、10年9月にオープンした「テックランドえびの」(宮崎県えびの市)。山田会長の出身地である宮崎県を皮切りに、売り場面積1,000m2以下の小型店の大量出店を進めた。13年3月期に開業した約80店のうち60店が小型店だった。
だが、小型店戦略は家電市場の低迷が続き、失敗に終わる。そのため、出店戦略を小型店から転換し、中・大型店に軸足を戻す。14年3月期に50店以上を出店し、大型店による反転攻勢をかける。小型店戦略は、読み通りにいかなかったということだ。
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