<ベスト電器買収の失敗>
九州地区でのシェア拡大を狙ったベスト電器(福岡市)の買収も読みを誤った。ヤマダは昨年12月13日、ベストを子会社化して持ち分法適用会社に組み入れた。だが、ベストの2013年2月期の連結売上高は前期比27%減の1,912億円と大きく落ち込み、当期損益は173億円の赤字(前期は6億円の黒字)。買収効果どころか、財務面でも足を引っ張る結果となった。
かつて家電量販店業界トップにいたベストは、販売する力を完全に失った。それを如実に示しているのが、月次売上高の前年比の比率だ。家電量販店各社は、テレビ需要の先食いの反動減で前年を下回っている。ヤマダの13年3月期のグループ全店(ベストを除く)の売上高は前年比14.7%減。これに対してベストの13年2月期の全店売上高は前年比28.3%減。ベストの落ち込みは、はるかに大きい。
ベスト全店の売上高の前年割れは、12年2月期が累計で22.0%のマイナス。13年2月期の売上高は、前年よりさらに落ち込んだのだ。ベストの買収は失敗だった。
<散々の結果で終わった中国進出>
鳴り物入りで進出した中国だが、これも結果は散々。ヤマダは4月22日、中国の「ヤマダ電機南京店」を5月末で閉店すると発表した。南京店は12年3月に開業したばかりで、わずか1年で南京から撤退する。
南京店は、店舗面積が1万6,000m2の大型店。当時は南京市の家電小売業者の間で、「黒船の襲来」と騒がれたという。サプライチェーンや物流システムの構築が不十分だったことを閉店の理由に挙げている。
日本で急成長を遂げていたヤマダが、次なる成長のターゲットに据えたのが中国市場だった。10年12月、瀋陽市に瀋陽店(店舗面積2万4,000m2)を開業し、中国市場に参入。11年6月に天津市に天津店(同1万5,000m2)を開業。3号店が南京店で、14年3月期末までに5店に増やす計画だったが、南京店以降の出店を凍結していた。
中国のメディアは、南京市在住の30代女性の発言を敗因の1つに挙げる。
<自由に触ることができるディスプレイ商品と、商品に関する店員の知識は、ほかの家電量販店にはないもので、評判は良かった。ただ価格は、ネットで購入した方が安い。「ヤマダで見て、よそで買う」という人が多かった>
これは、ヤマダの敗因を的確に伝えている。ネットショッピングの急成長で、「ショールーミング」と呼ばれる新しい消費行動に、ヤマダが対応できなかったということだ。消費者は品ぞろえが豊富なヤマダの店頭に行き、実物の商品を実際に触ってたしかめるが、ヤマダでは購入しない。スマートフォーンなどを利用して、同じ商品を安く販売しているネット通販で買う。店舗がショールーム化することを言う。
「ヤマダで見て、ネットで買う」。これは中国だけではない。日本国内でも若者を中心に広がっている消費行動だ。店舗のショールーム化は、家電量販店の存立基盤を揺るがしかねない問題を孕んでいる。ヤマダは、3兆円の売上目標を掲げた頃の勢いを失った。全役員の降格というショック療法で反転攻勢に挑む、山田会長の苦悩は深い。
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