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「維新銀行 第三部 クーデター」~第2章 クーデター当日(45)
経済小説
2013年5月 9日 07:00

<取締役会議(6)>
b_25.jpg 午前9時から始まった経営会議は予定の時間を45分オーバーして、11時45分に終了した。経営会議に出席していた役員のために、秘書室は食堂に弁当とお茶を13人分用意していたが、頭取の谷野と相談役の谷本は姿を現わさなかった。

 谷野は経営会議が終わると、その足で頭取室に戻り自宅から持参したサンドイッチと牛乳で簡単に昼食を終え、これから始まる取締役会議に加わる取締役4人に、どう説得を試みたら良いのか、また午後3時から予定されている記者会見にどう対処したら良いかを考えようとした。しかし谷本がオブザーバーで出席していた経営会議でのやりとりが思い出され、これはといった良い考えは浮かんでこなかった。思案しているうちに取締役会議の始まる時間が刻々と迫ってきたが、谷野が納得できる回答案は見つからなかった。谷野は「ここまで来たらいろいろ考えずに、ぶっつけ本番でやるしかない」と、自分自身に言い聞かせるように呟いて頭取室を出ていった。

 谷野がドアを開けると、議長の栗野以外は既に席について会議が始まるのを静かに待っていた。谷野が一礼して自分の席に座るとすぐに、栗野が秘書の助けを借りながらゆっくりと中央の議長席に座った。
 取締役会議には経営会議のメンバー11人の他に、新たに松木取締役、堀部取締役、大島取締役、原口取締役が加わることになるが、この4人にとっては会長の栗野の姿を見るのは久し振りであった。
 ただ松木、大島、原口の3名は栗野が取締役会議に出席することを事前に知らされているのに対し、堀部は取締役会議の直前に検査部長の黒部から「今日は久し振りに栗野会長が出席されている」と聞かされてはいたものの、実際に松葉杖を突いて議長席に座った栗野の姿を見て、驚きを隠すことができなかった。栗野の立ち居振る舞いを注意深く見ていた堀部は、「会長は自分自身の退任と引き換えに、頭取の谷野を必ず罷免させようとする『執念の塊』を胸に秘めて議長席に着いたな」と読み取るのに、そんなに時間はかからなかった。

 議長の栗野はゆっくりと出席者の顔ぶれを見廻しながら、
「今日は、谷野頭取、沢谷専務、石野専務、吉沢常務、北野常務、川中常務、松木取締役、堀部取締役、梅原取締役、大島取締役、木下取締役、小林取締役、古谷取締役、原口取締役、それに私栗野を加えて、久し振りに15名全員の取締役が出席しております。監査役会は、非常勤監査役の木村賢一郎明和友田生命社長は、所用のため本日は欠席されておりますが、大沢監査役、下田監査役の2名が出席されており、取締役会議の成立要件を満たしておりますので、只今より臨時取締役会議を開催致します」
 と述べて、開会を宣した。

(つづく)
【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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