<被害想定最大の静岡県に次ぐ三重県>
静岡県の駿河湾沖から四国南部沖に渡って広がる大規模な海溝「南海トラフ」。この断層に沿って、東日本大震災レベルのマグニチュード9クラスの地震が発生すれば最大32万3,000人が死亡する被害想定を内閣府中央防災会議が公表している。最大は静岡県の10万9,000人、三重県は4万3,000人と想定されている。被害の7割が津波によるもので、県内で津波の高さの最大予測は鳥羽市の27m。浸水域は最大1,015km2と東日本大震災の1.8倍で、1m以上の浸水域は三重県で112km2に広がる。
津波が最初に押し寄せる同県沿岸部では水産業が盛んで、伊勢湾から答志島にかけてはノリ、答志島から的矢湾にかけてカキ、英虞湾では真珠やアオサの養殖が行なわれる。津波が押し寄せれば水産業は甚大な被害が発生することが予想できる。
奥には採石場などが立地する志摩諸島の菅島が見える。そのさらに沖には三島由紀夫の小説の舞台にもなったことで有名な神島がある。
波に侵食されてできたリアス式海岸が続き、この辺りの沿岸部は比較的高台であることから、津波の人的被害は回避できそうだ。
パールロードシーサイドラインを伊勢方面へ進んだ鳥羽市勝村町では、牡蠣の養殖が盛んで、いたるところに牡蠣小屋が点在。旅館などの宿泊施設も数多く、好天に恵まれた取材日には穏やかな景色が広がっていた。太平洋に面した海岸線とは対照的に、ここから伊勢湾沿岸までは多くの建物が集積。水族館などの観光施設もあり、津波が押し寄せてきた際の避難経路の整備が急がれる。
全国の神社の本宗とされる伊勢神宮。天照大御神を祀る内宮そして外宮、2つの正宮があるが、外宮は比較的平地にあることから津波による被害が懸念される。
※記事へのご意見はこちら