＜取締役会議（７）＞
議長の栗野は、
「それでは早速、決議事項であります第１号議案の第95期の計算書類承認の件、および第２号議案の第95期の連結財務諸表承認の件について、担当の小林取締役から説明をお願いします」
と述べた。
それを受けて小林は、
「計算書類案は４月27日開催の臨時取締役会にて、すでにご承認をいただいております。また付属明細書は５月７日開催の定例取締役会においてご承認をいただいておりますので詳細な説明は省略させていただきます。次に連結財務諸表については、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に従って記載しておりますし、また科目の分類については銀行法施行規則によって作成しております。連結財務諸表の作成方針、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結剰余金計算書、連結キャッシュフロー計算書の内容等についても別添資料に記載されています。なお葵監査法人から監査結果については適正に処理されている旨の回答を得ており、連結監査報告書は６月21日に受領予定となっています」
と説明した。
議長の栗野は、
「この件に関して何かご質問やご意見はありませんか」
と問いかけたが、大筋は既に承認を得ている案件であることから質問や意見は出なかった。
やや間を置いて栗野は、
「それでは採決したいと思います。第１号議案および第２号議案について賛成の方は挙手をお願いします」
と問うと、全員から「異議なし」の声が上がり可決承認された。
それを受けて栗野は、
「ありがとうございました。それでは取締役会議の第３号議案で、定時株主総会の決議事項である『第95期定時株主総会の招集及び議案に関する件』を上程致します。引き続き小林取締役から説明をお願いします」
と述べた。
小林は、
「第３号議案は取締役会規程第10条１号により、第95期定時株主総会を下記の通り開催することについて決議を求めるものです。その内容については以下の通りとなります」
と述べ、
１．開催日時 平成16年６月25日（金曜日）午前10時
２．開催場所 当行本店の８階講堂
３．会議の目的事項 平成16年３月31日現在貸借対象表及び第95期の損益計算書、営業報告書の内容報告の件について
を、別添の資料に基づいて淡々と説明をしていった。
それを受けて栗野は、
「定時株主総会における決議事項について、５議案を上程致します。まず小林取締役から第１号議案および第２号議案について説明をお願いします」
と述べた。その議案とは、次のような内容だった。
第１号議案 第95期利益処分案承認の件
第２号議案 定款一部変更の件
第３号議案 取締役９名選任の件
第４号議案 監査役３名選任の件
第５号議案 退任取締役及び退任監査役に対し退職慰労金贈呈の件
栗野が第１号議案の「利益処分案」、第２号議案の「定款一部変更」を読み上げた時は、普通の声であった。しかし栗野が第３号議案の『取締役９名選任の件』を読み上げた時は、万感の思いがあったのか昂ぶった声になっていた。
栗野のその昂ぶった声の変化は、堀部に「今から『谷野頭取交代劇』（クーデター）が始まる」ことを強く予感させることになった。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
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