自民党元副総裁の山崎拓氏(近未来政治研究会最高顧問)に、安倍内閣と日本の針路について、(株)データ・マックスの児玉直代表が独占インタビューした。山崎氏は、「山拓」「拓さん」の愛称で有権者に親しまれ、聴衆をひきつける演説、政治家としての高い見識、リーダーシップに定評があった。中選挙区時代の旧福岡1区、小選挙区の福岡2区から衆議院議員12期。官房副長官、防衛庁長官、建設大臣を歴任し、党務では国対委員長、政調会長、幹事長、副総裁を歴任した自民党の重鎮政治家。衆議院議員を引退した現在も、近未来政治研究会最高顧問として、旺盛な活動を続けている。著書『憲法改正』を執筆するなど憲法9条改正を長年主張するとともに、日米安保・アジア外交に精通し、自民党幹事長(当時)として日朝国交正常化問題にも取り組んだ。山崎氏が、政治経済、外交で日本のとるべき"本道"を語った。
<現職時代と同じ「金帰火来」 派閥最高顧問として>
――現在、1カ月のうち東京での生活はどのくらいですか。
山崎拓・自民党元副総裁(以下、山崎) 現職時代と同じく"金帰火来"を続けていて、東京起点の見方だが、金曜に福岡に帰ってきて、土、日、月は地元にいる。派閥の看板は石原派となっているが、会社で言えば、会長に当たる最高顧問の肩書で派閥の運営に携わっている。
――現職時代と異なり、今は自由に判断する時間があるというのはいいのでは。
山崎 児玉さんと同じような立場で今は評論や執筆をしている。
――山崎先生は、現職のときよりもかえって若々しくなったみたいですね。
<集団自衛権の行使 解釈改憲でやるべきでない>
――さて、憲法改正、安全保障論において、山崎先生と安倍首相はどこが違うのか。
山崎 安倍首相は、集団的自衛権行使を、解釈変更でできると言っているが、歴代自民党の総理総裁は、鳩山一郎から始まって全員、「集団的自衛権行使は国際的にも認められており、国連憲章に規定もあるが、憲法9条が存する限り集団的自衛権は行使できない」と言ってきた。それに対して、「それは内閣法制局が解釈したことで、行政機関の一部が決める資格はない、内閣総理大臣が決めることだ」というのが、安倍首相の主張だ。歴代首相は内閣法制局の決定に唯々諾々と従ったわけではなく、国会で「今長官が述べたとおり。これがわが内閣の方針だ」と、答弁してきた。三角大福しかり、タカ派と言われた中曽根康弘首相といえども「これが俺の考えだ」と言ってきた。
私としては、憲法を改正して集団的自衛権を行使できるようにするのならば良いが、日本は法治国家であって、最高規範が憲法である以上、時の総理の恣意によって憲法の解釈を変えるのはいけないと考える。法治国家であることを忘れてはいけない。憲法の解釈を恣意的に変えていたら、もし共産党が政権をとったときに、どうするんだ。いったん確立した憲法解釈を「俺は気分が悪いから変える」ということでは困る。憲法改正手続きをして、国民投票に問うべきだ。ところが、まず憲法96条からいこうと、96条改正を今度打ち出した。これを次の参議院選挙の争点に据えたのが大きな落とし穴だ。これで、せっかくアベノミクスと称するやつで高支持率を得ているのに、一気におかしくなる。
<「96条改正」争点で安倍内閣変調>
――安倍首相は、まず憲法96条を改正して、国会における憲法改正草案の可決要件を現在の3分の2以上から、過半数に変えることを次の参院選の争点にしようとしているが、これは大きなミスではないか。
山崎 アベノミクスと言われているが、ことばの問題だ。景気は「気」だから、円安、株高が続き、日銀総裁を黒田東彦氏に変え、国民の気分を高揚させた。実際何かをやったわけではないのに大きく支持率が上がっている。それなのに憲法9条を改正するぞ、改正要件を緩めるぞ、今度の参院選挙が勝負だ、争点にするぞと衣の下から鎧を出した。これを争点にしたら一気におかしくなる。
――圧勝できるはずだったのに、なぜここまで図に乗らなくてはいけないのでしょうか。
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