<取締役会議(8)>
小林取締役は、
「今年の株主総会の集中日は6月29日(火)となっておりますが、当行は集中日を避けるため定時株主総会の開催日を6月25日(金)としています。お手元にお配りしております第95期計算書類の内容につきましては、平成16年5月7日開催の定例取締役会においてそれぞれご承認をいただいております。
続いて定時株主総会決議事項の第1号議案であります『第95期利益処分案承認の件』について申し上げます。当行は従来1株につき3円25銭を配当しておりますが、今年の3月末に60周年を迎えましたのでそれを記念して、1円の増配を提案するものであります。これも5月7日開催の定例取締役会においてご承認をいただいております。なお、これらについては葵監査法人および監査役会から、各々適正意見を付した監査報告書の提出を受けております。
次に第2号議案の件ですが、これは自己株式の取得に関する定款変更であり、4月8日開催の定例取締役会において承認済みですので省略させていただきます」
と述べ、説明を終えた。
議長の栗野は、
「小林取締役から説明がありましたが、ご質問やご意見はありませんか」
と問いかけたが、事前に報告や検討がなされていた案件であったため、改めて質問する者はなく第1号議案、第2号議案は満場一致で可決承認された。
栗野が、
「次に第95期定時株主総会決議事項第3号議案の審議に入りたいと思います」
と発言すると、場内は一瞬のうちに重苦しい雰囲気に包まれていった。
栗野は、
「先ほど終わりました経営会議において、第95期定時株主総会の時をもって谷野銀次郎氏、北野俊弘氏、川中隆史氏、梅原哲夫氏、大島俊之氏、木下秀男氏、小林辰彦氏、古谷政治氏の計8名の取締役が任期満了となります。それと私自身についても、任期途中ながら健康上の理由もあり退任することにしましたので、この度の総会に選任を提案する取締役候補者は、『谷野銀次郎、北野俊弘、川中隆史、梅原哲夫、大島俊之、木下秀男、小林辰彦、古谷政治の各氏の他、新任取締役として古田康彦氏の計9名としたい』とする案が谷野頭取より提出されました。
それに対して沢谷専務より、『取締役候補者は北野俊弘氏、川中隆史氏、梅原哲夫氏、大島俊之氏、木下秀男氏、小林辰彦氏、古谷政治氏、古田康彦氏、蔵元崇氏の計9名としたい』とする旨の動議が出されたことから、まず北野俊弘氏、川中隆史氏、梅原哲夫氏、大島俊之氏、木下秀男氏、小林辰彦氏、古谷政治氏、古田康彦氏の計8名を、総会に取締役候補者として選任するかどうかの賛否を問いましたところ、全員が了承しました。
次いで谷野銀次郎氏に替わって蔵元崇氏を取締役候補者とする動議案について賛否を問いましたところ、沢谷専務取締役、吉沢常務取締役、北野常務取締役、川中常務取締役、古谷取締役の5名が賛成し、谷野取締役頭取、石野専務取締役、梅原取締役、木下取締役、小林取締役の5名が反対、私自身は棄権しましたので、賛成5反対5棄権1という結果となり過半数に達しないため動議案は否決されました。そのため両案を取締役会に付議し、採決を受けることになったものです」
と、経営会議での『谷野頭取罷免』の経緯を説明した。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
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