<交流を重ねながら、新たな価値観のプログラムを>
建築家・有馬裕之氏は、福岡を拠点に活動を行なっている、日本を代表する建築家の1人。ここ福岡でも、代表的な建築物であるアクロス福岡をはじめ、旧博多駅、西鉄福岡駅など、さまざまな建築物に携わっている。世界的にも有馬氏の建築物は評価が高く、欧米をはじめとした海外の建築雑誌などにも同氏の名前はたびたび登場しており、世界中に『有馬ファン』がいるという。
有馬氏の手がけている領域は、建築家であるにもかかわらず、建築だけにはとらわれていない。インテリアからグラフィックデザイン、プロダクトデザイン、さらには都市計画などさまざまな分野におよび、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。
有馬氏は言う。「私は、今まで常に『自分があまり知らない、わかっていないゾーンを見たい』というような気持ちで、仕事をしてきました。日本でも、東京や福岡――もちろん、そういった大都市などもやっていますが、そうではないちょっと田舎の地域、あまり皆さんから注目されていない地域にこそ、いろいろな面白い内容のものがあるのではないかと思って、そこを実際に訪ねるところからプロジェクトが始まっているわけです。
私は建築家ですが、いわゆる建築というのはある意味1つの芸術の分野だと私は思っています。芸術というのは良い意味で『無駄をする』ことです。無駄をするというのは、もちろん実利を生み出すのも建築かもしれませんが、それ以外の部分――街の人や子どもたち、そこを訪れた人々などが、何か発見したり、何か自分に力を与えてくれたりするような空間をつくりたい――というのが、私の考え方です」。
こういったスタンスで各プロジェクトに関わっている有馬氏は、現地の人々の価値観と自らが持つ価値観を融合させていくなかで、新たな価値観のプログラムを生み出していくことに重きを置いている。そうして現地との交流を重ねながら、一緒になって『本当に面白いもの』をつくり出していこうとしているのだ。
<逆境の時代にこそ『価値』の意味を考える>
今の時代は、それぞれがどのようなことを目指すべきかという『原点』を、もう一度見直すべき段階に来ているのではないか――と有馬氏は言う。その際に有馬氏が考え方の一例として提示するのは、オーストリアの精神科医・心理学者であるヴィクトール・E・フランクルによる『3つの価値』だ。
「フランクルの考えでは、人間が実現できる価値というものは『創造価値』、『体験価値』、『態度価値』の3つです。そのうち『創造価値』とは、我々人間が行動したり何かをつくったりすることで生まれる価値のこと。たとえば、戦後の高度経済成長期などは、この価値に重点が置かれていたように思います。『創造価値』の次に出てくるのが『体験価値』で、これは何かを体験することによって生み出されるもの。たとえば、芸術を鑑賞したり、自然の美しさを体験したり、あるいは人を愛したりするなど、そういったことで創出される価値です。現在はニーズや欲望などといったものの高まりを受け、この『体験価値』へのウェイトが高くなっているように思います。
そして、最後の『態度価値』――これは、人間が自らの運命をどう受け止めるかによって実現される価値のことです。これは、病や貧困や、その他さまざまな苦痛の前で、活動の自由を奪われ、楽しむ自由を奪われたとしても、その運命を受け止める態度を決める自由が人間にはまだ残されている――そういった、人間が最後まで実現することのできる価値なのです。たとえば、東日本大震災の際には、あれだけ悲惨な状況下で自らの態度を律し続けた日本人の態度価値は、世界各国から賞賛を受けました。そういった意味で、今日本はチャンスを迎えていると思います。もちろん経済的な意味だけではありません。『態度価値』を意識的にやることで、日本人特有の何かすばらしいものを生み出していく――そういった段階に来ているのではないかと思います」(有馬氏)。
『逆境の時代』と言われているときにこそ、求めるべき本当の『価値』を見定め、『価値』の概念をもっと考えていくべきだ、と有馬氏は言う。
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<OFFICE INFORMATION>
代 表:有馬 裕之
所在地:福岡市南区高宮4-14-6(Fukuoka studio)
東京都目黒区駒場1-32-17 UNS2F(Tokyo studio)
設 立:1990年
TEL:092-531-3236(Fukuoka studio)
03-5454-2063(Tokyo studio)
<代表者 Profile>
有馬 裕之(ありま・ひろゆき)
1956年、鹿児島県生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、80年に(株)竹中工務店入社。90年「有馬裕之+Urban Fourth」設立。さまざまなコンペに入賞し、イギリスでar+d賞、アメリカでrecord house award、日本で吉岡賞など、国内外での受賞暦多数。さまざまな地域活性の町づくり委員も務める。作品群は、都市計画から建築、インテリア、グラフィックデザイン、プロダクトデザインなど多岐にわたり、日本・海外を含めたトータルプロデュースプログラムを展開している。
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<ご購入申し込み先>
(株)データ・マックス
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