「クラブ」などのダンス営業を風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の対象から削除するように求めて、市民団体が集めた署名15万5,879人分が5月17日国会に提出される。ダンス営業が風営法の対象となっており、警察が各地でクラブ経営者の摘発に乗り出したため、クラブ業界やダンス愛好者、音楽家らが「ダンス規制は時代に合わない」と規制見直しを求めたものだ。同日には東京で提出集会が予定されている。
DJの流す音楽に合わせてダンスを楽しむ店「クラブ」。2010年、クラブ界に激震が走った。大阪のクラブが警察に摘発され、クラブ経営者が逮捕される事件が起きた。騒音やゴミの散乱など住民からの苦情により警察が動き、クラブを無許可営業容疑で摘発したのだ。現法律では、クラブ営業には許可が必要で、許可なく客を踊らせた場合は風営法違反となる。
<坂本龍一氏ら著名人が呼びかけ>
ダンスクラブの取り締まりは大阪に端を発し、東京、名古屋、福岡など全国に波及している。クラブ業界はこの規制を改正し、風営法の対象から「ダンス」を削除するように求めている。ダンスカルチャーを守り、風営法の改正を求めている団体「Let's DANCE」(呼びかけ人、坂本龍一氏ら著名人多数)は昨年5月から全国で署名運動を開始。風営法のダンス規制の見直しを求める署名を5月15日現在、15万5,879筆集め、いよいよ5月17日に国会に提出する。
Let's DANCEでは「『15万筆』を越える署名となり、110人にもなる法律家の会を突き動かし、そして国会議員の方々までをも突き動かす事が出来ました。」と述べ、多くの方の念願が詰まった署名で風営法改正を実現したいとしている。(Let's DANCEホームページより)
<時代に取り残された風営法>
風営法は終戦直後の1948年に制定された。目的は「売買春」を防止するためだ。当時、売春婦がダンサーとして客をとっていた時代に、風紀を正す目的で制定された。しかし、時代は変わった。社会の変化と共に法律は変わっていかなければならないが、この法律により現在日本では営業目的でダンスをさせることが規制されている。ダンスクラブの営業は許可制であり、様々な条件をクリアしなければ、営業できない。
許可にはどんな条件が必要か。風営法では、ダンス営業するために客室の床面積が1室につき66平方メートル以上あり、その客室床面積の5分の1以上がダンスのスペースでなければならないと定めている。さらに床面から高さ1メートル以上の仕切り、ついたて、イスなどがない場所に限られている。また営業時間は商業地域では深夜1時まで、居住地域では深夜0時までとされている。多くのクラブでは、広さの問題や営業時間に制約があるという理由から、許可を取らずに営業している。しかし警察は長年黙認してきた。
<踊ってはいけないクラブ・踊り明かせないクラブ>
客が音楽に合わせて、肩を揺らす行為でさえダンス行為と見なされ、許可のないクラブは摘発の対象となる。ダンスクラブであるにも関わらず、店内には「ダンス禁止」という貼り紙を行なう店舗も存在する。
広さ66平方メートルをクリアした店舗においても、営業時間を守らなければならない。客は主に20~30代の若者である。仕事を終え、クラブに向かう。深夜帯の書入れ時に営業できず、クラブ経営者は悩んでいる。客にとっても、「踊り明かす」ことはできず、結局消化不良のまま、帰宅を命じられる。つまり法律上、朝まで踊れるクラブは日本にはないということになる。
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▼関連リンク
・Let's DANCE(レッツダンス署名推進委員会 風営法からダンスの項目削除を求めます)
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