知事交際費の制度自体を2008(平成20)年3月に廃止した大阪府、知事に特別の考えがあって知事交際費の公開をしていない和歌山県を除き、原則として知事交際費の使途は公開されている。ところが、この公開には魂がこもっていない。12年度が終わってから1カ月半が経過したが、いまだに同年度分について使用の事実を公開していない県もあるくらいだ。
<12年度の都道府県知事交際費>
表(12年度知事交際費一覧)は、知事交際費の使途についての公開原則の有無、12年度の知事の交際費についての公開状況、件数、合計金額、支出1件あたりの金額、人口千人あたりの金額を示したものである。
この表の作成過程で、不適正な使途がないかもチェックしてみたが、知事交際費の対象が絞られていることもあって、不適正だと指摘できるようなものはなかった。
一覧表になってはいるが、順次公開中のため年度途中までしか公開されていない県もある。都道府県によって、交際費の対象となる支出も異なる。また、知事交際費のなかに、副知事の交際費を含んでいる場合もある。そういうわけで、各都道府県の間で厳密に比較することはできない。しかし、読み取れることもある。
<比較的使用額などが多い県>
今わかっている限りで年間の支出件数が最も多いのは秋田県、年間の支出額と人口千人あたりの額が最も多いのは山梨県、1件あたりの額が最も多いのは東京都となっている。件数や額が多くても、しっかり仕事がなされれば問題はないと思われるが、それぞれの住民が個々の支出内容や目的、金額などを知ったうえで、きちんとチェックしておく必要はあろう。
件数や1件あたりの金額などは、都道府県によってかなり開きがある。件数は8~235件、年間の合計金額は19万2,000円~298万2,525円、1件あたりは8,267円~5万1,857円、人口千人あたりは61~3,501円と、結構ばらつきがある。
福岡県と九州の他県との比較など詳細については、長崎県が3月分を公開した後に、紹介するが、福岡県に関しては、1件あたりの額が多少多めの感はある。
なお、沖縄県は、他と異なり、閣僚が来県した場合の費用や、来客に渡す県産品まで交際費に含めていて、その分、額がかさんでいる。比較するに当たっては、各県の種々の事情や交際費の対象範囲なども考える必要があろう。また、本来、知事交際費の対象範囲にどのような支出を含めていくべきかについても、それぞれの住民が考え、適正使用を目指していく必要があるだろう。
<兵庫県は3カ月分のみ公開。公開時期が一番遅れているのは富山県>
一部の期間しか公開していない自治体があるということや、公開まで時間がかかる自治体があるということも問題であろう。
兵庫県(井戸敏三知事)は、他の都道府県とは違って、ホームページで過去3カ月分しか公開していない。
また、12年度が終わり、13年度になってから、もう1カ月半にもなるのに、いまだに12年度分について公開済みではない県がある。それも1県だけではない。
ほとんどの都道府県は、香典、供花などの慶弔費、お見舞、叙勲のお祝いなどを交際費の対象としているが、いずれも公開に時間を要するような性格のものではない。現に全部の都道府県のなかで最も公開が早い宮城県は、12年度分を今年4月1日に公開している。各県の公開内容を見れば、宮城県と同程度のことは十分やれるはずである。
公開が遅れている県が、いつの分まで公開しているか、見てみると、富山県(石井隆一知事)が12年度第3・四半期(10~12月)まで、三重県(鈴木英敬知事)が13年1月まで、長崎県(中村法道知事)、滋賀県(嘉田由紀子知事)、福島県(佐藤雄平知事)、は、いずれも13年2月までしか公開していない。一番公開が遅れている富山県は、執行終了後4カ月半以上も公開していないことになる。長崎県は、翌々月の初旬までに公開するというルールをつくっているが、ちょっと悠長すぎるし、それすら守られていないような現状である。いずれの県も分析めいた記述はなく、単に香典にいくら、花代にいくらという程度の公開で、なかには当該月の使用件数、使用額の合計すら発表していない例もあるくらいなのだから、時間がかかる理由が理解できない。
また、岐阜県、京都府なども公開時期が比較的遅く、5月中旬近くになってようやく3月分まで公開した。制度の趣旨からすると、疑問がある。
公開時期が遅い県のなかに改革派と呼ばれていた知事もいる。これをきっかけに、ぜひこれからは、もっと早く、もっと身を入れた公開をしてもらいたいものだ。
<年度の累計の発表がない県も>
個別の事例を公表するのみで、毎月の件数や額の合計すら掲載していない自治体もある(大分県、鹿児島県など)。12年度の交際費支出件数が何件か、額は総額いくらになるのかを掲載していない自治体もある(高知県、沖縄県など)。見る側が計算しろということかもしれないが、あまりにもおざなりな公開状況である。累計の件数や額を公開していない自治体に、個別に件数や額の累計を聞いてみたが、なかなか教えてもらえず、大半は記者が自分で計算した。栃木県総合政策課秘書室からの「件数の掲載については、今後検討の上対応したい」という回答が、まだ良心的に感じられるほどの冷たさだった。
せめてエクセルですぐに計算できるような形で公表してもらえるとありがたいのだが、手間暇をかけないと計算できないような形で公開している県が結構ある。わざとそうしているのではないかと疑いたくなるくらいだ。ここでも公開に魂がこもっていないと痛感する。
※記事へのご意見はこちら