博多座5月公演「女たちの忠臣蔵」が、女性の生き方を再考察させてくれる作品として、静かな話題を呼んでいる。本作品は、赤穂浪士たちを影で支えた女たちの討ち入り前後を描いた、愛と葛藤のドラマ。今月26日まで、博多座にて上演している。
愛する男性の死に様に直面した5人の女性、大石内蔵助の妻、りく(高島礼子)、大石瀬左衛門の姉、つね(一路真輝)、磯貝十郎左衛門の想い人、しの(藤田朋子)、間十次郎の妻、りえ(熊谷真美)、浅野内匠頭の妻、瑤泉院阿くり(高橋惠子)の生き方が、それぞれ見所ある演出で描かれている。女たちだけでなく、信念のために、敢えて愛する女性を遠ざけようとする男たちの心境も切ない。
しかし、男たちの死が「主君に対する忠義」という価値観を共有しているのに対して、女たちの生き方は各々あり、最終的にはそれぞれ違う生き方を選択するところが興味深い。登場人物の年代が幅広いので感情移入の幅も広く、「年齢を問わず楽しめる作品なのでは」という感想が聞かれた。
父が癌で闘病しているという50代既婚女性は「母に観せたいですね。ひとりでは生きていけないタイプだから、配偶者の死を意識している今これを観ると、自分の生き方を考えてくれるようになるかもしれません」と語った。また40代未婚女性は、「仕事熱心な男性が好きなので、そのような人を支えることに喜びを感じつつも、淋しさを覚えることも多かった。主君に忠義を果たすために死を選ぶ男たちを見送る女たちの姿は結構堪えた」と目頭を押さえた。その一方で、「男が男なりの信念を貫いて生きるなら、女も女なりの信念を貫いて同等に生きるまで」(同上女性)という力強い意見もあった。
その他には、「自分の人生を改めて考えるいい時間になった」「時代が変わっても、愛を大切に育てていきたいのは皆同じなのですね」「物質では得られないものの大切さに気づく作品」などの声があった。
また舞台では、「忠臣蔵」には付きものの、"降りしきる雪"が映え、大きな魅力だった。
お問い合せは、博多座電話予約センター(TEL092-263-5555)まで
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