<東京出張は1回約9~11万円の公費支出>
2010年12月7日の市長就任から13年3月25日まで、前任者(吉田宏前市長)の約2倍の出張件数、そして国内移動で航空機を利用する際は『ファーストクラスが基本』となっていた高島宗一郎福岡市長。約1兆5,000億円の負債を抱え、行財政改革が求められている福岡市において、高島市長の公費支出への認識に疑問符が付いた。今回から、航空機・ファーストクラスを利用した出張のなかで39件と最も多かった『東京出張』をクローズアップしていく。
現在、福岡・東京間の航空賃は、JALの往復割引で片道3万4,470円、ファーストクラスが片道4万1,470円。ANAでは往復割引で片道3万3,470円、プレミアムクラス(JALのファーストクラス)が片道4万2,870円。往復割引での差額は1万4,000円~1万8,800円となる。
行先が東京のみ(36件)で見ると、ファーストクラス代を含む交通費のほか、1泊1万6,500円の宿泊費、1日6,600円の日当などを含む費用は合計343万578円。ファーストクラスの東京出張では約9万~11万円の費用がかかっていた。なお、この金額は高島市長のみの分。同行した副市長や局長、市職員にかかった費用は含まれていない。
これらの費用は、市民が納めた税金を原資とする公費から支出されている。したがって、当然ながら成果が求められる。一体、 高島市長は、ファーストクラスの〝快適な空の旅〟を経て訪れる東京で、どのような公務に取り組んでいるのか。ここで明らかにするのは、同期間中に8件あった『国に対する提言活動』などとされる公務の内容だ。
<得意のプレゼンはなく名刺配り>
『国に対する提言活動』を所管する福岡市総務企画局企画調整部によると、国への提言活動は、各省庁にいる閣僚や局長・審議官、および国会議員などを訪問して行なわれる。そのスケジュールを見ると、訪問先での滞在時間は、1人あたり10分~30分くらいのものが多く、10年12月10日の市長就任挨拶を兼ねて行なわれた提言活動、および13年1月8日の提言活動にいたっては、〝1人あたり2分〟。普通の名刺交換でも軽く雑談でもすれば時間を超過しそうな短さだ。対象者が不在の場合、その分、余裕ができるというが、それでもたかが知れている。
提言された内容は、港湾政策、空港整備、地下鉄延伸、社会福祉など、福岡市にとってどれも重要なものばかり。民放アナ時代に培った経験を活かし、記者会見ではフリップを用いるなど工夫されたプレゼンテーションを行なう高島市長だが、その能力を『国に対する提言活動』で発揮するにはあまりにも時間が短すぎるはずだ。実のところ、提言活動では、名刺とともに「国に対する提言事項 最重点事項」などと書かれた資料を手渡す作業となっているという。「プレゼンを行なうのは市長ではなく、市職員が作った資料」と言っても過言ではないだろう。
また、通信インフラが発達した今の時代に、ただ資料を渡しに行くために9万~11万円の費用(市長のみ)をかけるのも馬鹿げた話である。この公務は宿泊を伴うことも多い。驚くことに、約50人が訪問先リストに名を連ねた10年12月10日の提言活動は日帰り。残り7件の提言活動は、すべて宿泊を伴っていた。しかもなかには、「市長の行動予定(案)」として、ずい分とアバウトな記録しか残っていないのもあった(次回紹介)。はたしてこれらが、福岡市にたった1人の市長の、限られた貴重な時間を割くに値する公務と言えるのだろうか。何か、提言活動以外のところでも〝重要な活動〟があるのではないかと考えてしまう。
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