心臓カテーテルのパイオニア延吉正清氏が小倉記念病院の病院長と同病院を運営する平成紫川会理事長の辞任を表明してから間もなく1年。延吉氏は病院長・理事長にとどまり続け、延吉氏の退任問題は、第2幕に突入した。そして今回、"懲罰的降格人事"が発表されていたことがわかった。かつてのソ連を彷彿させる"粛清"が吹き荒れている!
5月15日、小倉記念病院の各職場では、人事異動が口頭で発表され、院内に衝撃が走った。
関係者によると、降格された医師は、瀬尾勝弘副院長(麻酔科)、循環器内科の岩淵成志主任部長、横井宏佳主任部長、合屋雅彦主任部長の4人。瀬尾氏は、単なる麻酔科部長へ2階級降格、岩淵、横井両氏は健康管理センターの単なる医師、つまり無役へ3階級の降格、合屋氏は循環器科副部長に2階級降格。
通常では考えられない降格ぶりだ。その理由について、発表を聞いた関係者の話を総合すると、「島村秀一事務長に加担し、病院を混乱に陥れた。小倉ライブを延吉院長の許可なく主宰しようとして延吉院長の名誉を傷つけた」と、説明されたという。
降格の内容、理由いずれからも、懲戒処分とみるのが筋だ。
労使紛争に詳しい社会保険労務士は「懲戒処分が有効になるためには、一般的には(1)罪刑法定主義の原則、(2)平等取扱いの原則、(3)相当性の原則、(4)適正手続の4つの要件が必要。とくに、罪刑法定主義の原則は、具体的には就業規則に、懲戒事由、懲戒の種類・内容があらかじめ明記されていなければいけない。事業主が気に入らないことがあったからといって従業員を好き勝手に懲戒処分できるわけではない」と、指摘する。
これまでNET-IBでは、延吉氏の向精神薬不正入手疑惑・ワンマン運営への批判から湧き上がった病院改革の動きを追った。約1年前の2012年6月5日、副院長らが連名で延吉氏に理事長・院長の辞職を勧告し、延吉氏がいったんは辞任を表明。延吉氏が居座り続けたため、病院長・理事長の地位にないことを求める仮処分が申し立てられたが、福岡地裁小倉支部は棄却決定した(即時抗告と本訴が審理中)ところまでを報じてきた。"第1幕"で勝利を手中に収めた延吉氏が、裏切り者を"粛清"にかかったと、関係者はみている。
とくに、主任部長だった岩淵、横井両氏の降格、配置転換は目を覆う異常さだ。循環器内科は、心臓カテーテルを扱い、いわば延吉氏のおひざ元の診療科。身内からの"裏切り"に鉄槌を下したと見られても仕方ない。
病院関係者からは「小倉記念病院の売り上げの4割、利益の6割は循環器内科が占めている。その循環器内科でも、降格させられた3人が腕が良くて、主力だ。そのうち2人の主任部長は閑職の健康管理センター行き。これでは、病院の6割の利益を生み出す循環器内科を弱体化させ、経営が立ち行かなくなる」と、懸念の声が上がっている。
関係者によると、田中院長代行は今回の人事について、病院幹部が出席する会合で「私がやったのではない」と釈明しているといい、延吉氏が直接判断したことをうかがわせる。
また、延吉氏は5月27日、久しぶりに病院に姿を見せると、事務室を訪れ、居合わせたスタッフ全員の前で「わしが院長・理事長だから、わしの言うことを聞かないと処罰する」と言ったという。
"恐怖政治"の復活を予感させる宣言に、その場の全員が凍りついた。
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