<近距離圏からの観光客がほとんど>
福岡からだと日帰りで行くことができ、手軽な観光地でもある佐賀県。虹ノ松原や唐津城で有名な唐津、イカの活き造りなどが有名な呼子、陶器で名高い有田や伊万里、温泉地である嬉野・武雄など複数地域に観光資源が存在する。
佐賀県の2010年(1月~12月)の観光客数は、2,993万4,000人だが、内93%にあたる2,792万1,000人が日帰り観光客だ。そのため宿泊客の数は、前稿で述べたように九州各県のなかで最も低い数値となっている。
また、観光客の74%が自家用車利用であることも特色だ。九州内からの観光客が46%(うち福岡県が31%)、佐賀県内の観光客32%となっており、近距離圏からマイカーで気軽に訪れる人が多いことを示している。
<集客力を誇るイベントが複数>
天候にも恵まれた今年のゴールデンウィーク期間中、佐賀県西松浦郡有田町で第110回有田陶器市が開催された。来場者数は137万人という過去最高の人出を記録。これは、過去最も来場者の多かった第100回の132万人を大きく上回った。
佐賀県には、有田陶器市の他にも圧倒的な集客力を誇るイベントが複数存在する。毎年11月頃実施される佐賀インターナショナルバルーンフェスタ(佐賀市)、唐津くんち(唐津市)などだ。
有田陶器市は毎年100万人以上の集客力があるが、2010年の有田町の観光客数は、205万9,700人となっており、1年間に訪れる観光客の半数以上がGWの陶器市期間中に訪れていることがわかる。
また、2010年に実施されたバルーンフェスタには、92万1,000人の観客が詰めかけている。同年の佐賀市の観光客数が538万8,700人であることから、佐賀市観光の約17%がバルーンフェスタによる集客ということになる。
イベント時にこれほどの高い集客力を発揮するのであれば、工夫次第では、通年でより人を呼べるようにもなるだろう。一般社団法人佐賀県観光連盟の担当者は、「たとえば、有田陶器市は現在、秋も実施しており、他にひな祭りも実施しています。春の陶器市以外の時期にもイベントを実施し、観光のオフシーズンにも集客できるように取り組んでいます」とコメントしている。有田でのひな祭りは、有田焼で作られたひな人形が、町内一円に飾られるというもので、今年で9回目の開催となった。
後述の佐賀県の資料(佐賀県政策カタログ2011)には、「本県においても、新たな観光ニーズを的確に判断し、日帰り観光客の誘致はもちろんのこと、宿泊させるための仕掛けづくりを行なうことで、『選ばれる佐賀県』の実現を目指していく必要があります」という記載がある。
宿泊客数増加の取り組みについて佐賀県観光連盟の担当者に尋ねると、「佐賀県は宿泊客数が少ないが、オンシーズンの宿泊客数はそれなりにあります。宿泊客数を増やそうとすると宿泊施設のキャパシティの問題が出てきます」と、悩みを打ち明ける。
宿泊客数は増やしたいが、オンシーズンは受け入れ側の容量の問題があり、これ以上積極的に受け入れるのが難しいという状況なのだ。佐賀県観光連盟担当者の話では、今まで人が来ていなかった閑散期に、新たにイベントを実施し、日帰り観光客、宿泊客問わず今までとは違う時期の観光客増加を狙っているという。そのイベント目的で来た人のなかに、宿泊客もいるだろう、という目算のようだ。
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