29日、福岡市博多区の博多川(那珂川)で、六月博多座歌舞伎前の吉例行事、「船乗り込み」が行なわれた。
船乗り込みは、1999年、博多座誕生を記念して多くの人々の協力のもと生まれた。あれから14年、今や5月下旬の風物詩として、すっかり定着している。
キャナルシティ博多横の水流公演から博多リバレインまで800mの博多川を花道に、両川岸を観客席に見立て、歌舞伎役者衆が船に乗って福博入りするのを、芸を尽くしてお出迎えする。
今年は、4代目市川猿之助丈、9代目市川中車丈など、澤潟屋の役者衆10名他、博多座などの興行関係者、福博商工関係者、一般招待者などを乗せた10艘が川を下った。
口上の会場、川端商店街横の川端ぜんざい広場前では、午後1時の式典開始時刻と同時に、福岡藤本会社中による「博多川お迎え演奏」が始まった。船乗り込みの川下りを祝っての祝い唄「万歳くずし」や、博多どんたくでおなじみの「ぼんち可愛いや」他、伝統的な祝い唄、お囃子の数々が三味線の調べに乗って賑やかに繰り広げられ、船の到着を待ちわびる多くの観衆も愉しげに耳を傾ける。やがて川上から一艘目の船が橋の下をくぐって博多座の提灯を掲げ、登場。続いて、猿之助丈を乗せた二艘目、中車丈を乗せた三艘目など、役者衆を乗せた船が次々と姿を現すと、箇所箇所で花吹雪が舞い、「澤潟屋!」の掛け声とともに、各々の役者衆に向けた歓声が上がった。
六月歌舞伎は、2代目市川猿翁、4代目市川猿之助、9代目市川中車の襲名披露が行なわれるのも話題のひとつ。とくに、今まで俳優として知られていた香川照之が歌舞伎役者、中車として新たなスタートを切ることで、従来の歌舞伎ファン以外の注目も集まっているようだ。
10艘の船が止まる会場川沿いの光景は圧巻。皆が見守るなか、口上が始まり、六月歌舞伎、昼の部「スーパー歌舞伎 ヤマトタケル」、夜の部「小栗栖の長兵衛」、「口上」、「楼門五三桐」、「義経千本桜」の演目と、役者衆名が朗々と紹介されるたびに、大きな拍手が起こった。
観衆のなかには、カメラを持つ人に場所を譲り合う光景も見られ、皆で興行を祝い合う和やかな雰囲気が漂っていた。また、抽選によって選ばれた福岡市民が乗る10艘目を見て、「若い人も乗っていますね」と、世代を超えて歌舞伎のファン層が広がりつつあることに期待する声も聞かれた。
この後、船は博多川送り囃子に見送られながら博多リバレイン方面に向かい、鏡天満宮前にて下船。参拝の後、式典が行なわれた。
六月博多座大歌舞伎は、6月2日から26日まで行なわれる。
■乗船役者衆(澤潟屋)
亀治郎改め 市川猿之助
市川 中車
市川 右近
市川 猿弥
市川 春猿
市川 寿猿
市川 弘太郎
市川 月乃助
市川 笑三郎
市川 笑也
■「船乗り込み」総合スケジュール
乗船式典 キャナルシティ博多特設会場
乗船 清流公園(博多川上流)
口上 川端ぜんざい広場前
下船 博多リバレイン
参拝 鏡天満宮
式典 博多リバレインフェスタスクエア
<六月歌舞伎に関するお問い合せ>
博多座電話予約センター
TEL:092‐263‐5555
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