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脱原発・新エネルギー

北九州スマートコミュニティ創造事業(2)
脱原発・新エネルギー
2013年5月31日 13:00

 電気をどうつくるか。ほとんどの原発が停止している現在、それは大きな課題の1つとなっている。原発に頼ってきた電力政策が大転換を迎え、未来に向けてどう舵を切るべきかが模索されているのだ。それにともない、これまで停滞気味だった発電の新技術が次々と盛り返しを見せ、新たな提案がなされてきている。同時に、電力を使いこなすか、という点も見直されているところだ。北九州市八幡東区東田では今、北九州スマートコミュニティ創造事業と銘打ち、エネルギーに関するさまざまな実証実験がなされている。

<水素エネルギーの実用化>
 エネルギーの源はそれだけではない。コジェネは同エリアの基幹発電ではあるが、先進的な技術ではない。ここでいうエネルギーは、太陽光などのその他の再生可能エネルギーも用いられているが、それもいわば最先端テクノロジーとは言えない。同実証実験で特筆すべきは、水素エネルギーの活用である。

 水素を燃料電池の要領で発電に活用し、地域の電力の一部になす実験がなされているのだ。コジェネは熱を利用する点が異なるが、基本的にはガスタービン発電機である。もう慣れ親しんだ技術といってよい。
 しかし、この水素は違う。水に電気を与えると酸素と水素が発生する。これは誰しも理科の実験で目の当たりにし、知っていることだと思うが、その逆、つまり酸素と水素を反応させて水をつくると電気が生まれる、ということはあまり知られていない。燃料電池、と銘打たれてはいるが、その実は化学発電なのである。小規模な、たとえば自動車を動かす電源としてや、家庭用のエネファームとして燃料電池は活用されつつある。同地区の実験は純水素をパイプラインで送り、それを活用して恒常的に活用していこうという点が、ほかと異なる。

 北九州市に設置されている燃料電池はまだ出力の小さなものだが、それでも安定して大出力が得られれば、世界中の都市で補助電源の1つとして活用されることになるだろう。
 そのほか、電源としては1メガの太陽光発電、小型風力発電などがなされ、それぞれ活用方法について研究が進められている。

<スマートメータの設置>
 これら発電方法は、エネルギーの地産地消という点では大きな意味がある。が、先進的な取り組みとしては、先が読める技術ではある。というのも、いずれもある程度の実績がある技術だからだ。ところが、電気の使い方の分野は違う。どういう仕組みを取り入れたら、どういう使われ方になるか。制度、設備、ライフスタイル。そういったエネルギーとの現実的な付き合い方の実験こそが、北九州スマートコミュニティ創造事業の根幹である。

mieruka.jpg 電気との付き合い方として、スマートメータの導入がある。電気の"見える化"という言葉が唱えられている昨今、建物で今、どれくらいの電力が使用されているのかを、具体的に「見る」ための装置である。通常の電気メータに非常に似ているが、その実態は少しだけ賢い。
 電気をどれくらい使っているのか知るための装置が、電気メータだ。これまでは主に電力会社の検針係が記録し、請求するためだけにメータは使われてきた。そうではなくて、記録が取れるということを、常に記録しているという意味に解釈し、今、どういう状況なのかを判断するためのレポートをライブで手に入れるためのツールにするのである。メータから使用状況を示すレポートが室内の端末に送られて、現状がしっかり把握できる。それによって、使いすぎている場合は自主的に抑制させたり、気温、天候などによって電力の消費がどう変化するかのデータを取ったりして、スマートメータの有用性を調査している。

 同実証エリアでは225世帯、50社にスマートメータを設置し、その利用のされ方も含めて実証されている。
oti.jpg 「最初は興味深くモニタを頻繁に見ていた住民の方々も、時間が経過するにつれて見なくなっていく、ということがわかってきました。現在、設置しているスマートメータとモニタ端末は、電気を見る機能しか付加されていません。これに、たとえば簡単な通信機能を付加したり、サービスができるようにしたりするといった改造を加えれば、より利用頻度が高くなることも考えられます。ただし、スマートメータは通常のメータと比べて、1割程度の電力消費を抑える効果があることがわかってきました。"見える化"するだけでも、それだけの効果があるのです」。
 北九州市環境局スマートコミュニティ担当の越智豊係長(取材時)は、こう語ってくれた。電気を見るためだけの装置であれば、どうやら費用対効果は高くない、という結論が得られそうということだが、その通信機能を用いて、住民サービスを厚くするなどの付加価値を入れれば、省エネとともに導入メリットが高まると見ているのである。 そういったことがわかってきただけでも、素晴らしい成果だ。

 省エネにつながるだけでなく、スマートメータにより電気消費が予測できるようになれば、発電能力の適正化ができる。それによって、不要な余剰電気設備を排除することができるようになれば、電気料金も下げることができるだろう。電気が見えることによるメリットは、大きいのである。ただ、見えるだけでは、なかなか見てもらえないということがわかった。それゆえ見せるための工夫が必要ということだ。

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(つづく)
【柳 茂嘉】

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