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脱原発・新エネルギー

「ドン」を抜いた「ピカドン」~玄海原発訴訟で詩人のアーサー・ビナードさん
脱原発・新エネルギー
2013年6月 1日 07:00

 詩人のアーサー・ビナードさんが5月31日、佐賀地裁で開かれた玄海原発訴訟の口頭弁論で意見陳述し、「言葉の選択一つで、私たちは実態を正確につかみ、視点を変えることができる」と指摘し、「ウランの核分裂によるプルトニウム作りが原子炉の本質」だと訴えた。
 同訴訟は、47都道府県6,097人の市民が国と九州電力を相手取って玄海原子力発電所の操業停止を求めた「原発なくそう!九州玄海訴訟」。

 ビナードさんは、米国ミシガン州出身。大学卒業と同時に来日。英語、日本語両方で詩やエッセイを創作。2001年に詩集「釣り上げては」で中原中也賞受賞。

0531_genkai_a_t.jpg ビナードさんは意見陳述で、「世界の見方は日本語を習得することで大きく変わった」として、広島の被爆者からピカドンという言葉を聞き、原爆と原発の同一性という視点、本質をつかんだと紹介。「核開発も原子力開発もウラン濃縮から始まるが、ウラン濃縮は非効率的なので、核爆発をともなわずプルトニウムを量産することがマンハッタン計画の最大の課題だった。ピカドンのドンを抜いたピカドン、爆発抜きの原子爆弾として開発されたのが原子炉という装置だ」と指摘した。「原子炉という言葉に偽装され、発電機として売り込まれ、日本列島に50基以上、米国に100基以上設置された」と述べた。
 核燃料、使用済み燃料について、「燃焼しないものなので『燃料』ではないし、生き物への被曝が続くので『済み』は現実と異なる」と述べ、「言葉が現実とかみ合わないペテンの道具に成り下がっている」、「言葉が実態とつながっていれば法律の営みも文学の営みも成り立つ」と強調した。
 ビナードさんは、「私は、ペテンを見抜いて言葉を紡ぎたい。この裁判で問われていることは、ピカドンの原料作り(プルトニウム作り)をジリジリと続けるべきかどうかだ。司法と文学に携わる者の言葉の選択にかかっている」と結んだ。

 口頭弁論では、ビナードさんのほか、東京から福岡県に避難している原告の刀禰詩織さん(33)が意見陳述。「2011年3月14日、福島原発3号機の爆発を聞き、当時3歳の娘と2人で実家に避難した。新幹線は、同じように避難する母子が何組もいた。避難は過剰なものかもわからない。しかし、娘に放射能で障害が起きたらと思うと、娘の健康を選んだ。九電、国の代理人の方にも大事な家族がいる。経済は大事だが、健康あっての経済だ。法律の世界では、子どもを健康に育てたいという願いを受け止めてほしい」と訴えた。
 原告側は、原発に公共性・必要性がなく、原発の発電コストは他の発電よりも高コストだと指摘。「国の基準を守ったからといって安全が担保されているわけではなく、安全基準ではなく稼動させる基準に過ぎない」と主張した。

【山本 弘之】


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