国内テレビ局の番組内容に敏感な中国政府。広電総局(ラテ総局)がすべての番組の放送内容をチェックし、内容の詳細、登場キャストに至るまで監視している。とくに外国人(台湾人も含め)が出演する際は、テレビ局は事前に広電総局に申請し許可を得ておく必要がある。
昨年の日中関係悪化以降、日本人タレントは中国国内の番組に出演することができなくなり、日本を紹介する番組も姿を消していた。しかし、この緊張状態のなか、「変化」の兆しとも呼べるような現象が起きた。
北京テレビに「挡案」というタイトルの人気ドキュメンタリー番組がある。中国国内外の歴史や政治、社会現象などを取り上げる硬派なドキュメンタリーで、深い取材と鋭い分析の再現フィルムが特徴の番組だ。今回、その「挡案」が、現地で活動する日本人司会者を「ナレーター」として起用したのである。
製作された今回の番組テーマは、日本の「芸能界薬物事件」。中国でも絶大な人気を誇った酒井法子さんの薬物事件を中心に、日本の芸能界の裏事情を取り上げた(日本にとって好意的な内容ではないが、悪意を含んだ内容でもない)。このテーマにナレーターとして起用されたのは、中国のテレビ番組業界でプロデューサー兼司会者として活動する吉松孝さんだ。
吉松さんはここ数年、中国を中心に活動していたが、日中関係悪化後、台湾へと舞台を移していた。今回の番組で吉松さんは、「日本芸能人のセリフシーン」で日本語のナレーションを加えている。ここ数カ月、中国テレビからは「日本人」のみならず「日本語」も消えており、日本語のナレーションが流れるというのは、久しぶりのことという。
日本人のテレビ「画面」への出演はいまだ正式に認められていないが、今回の「ナレーション」での出演は、日中間緊張状態の雪解け兆候とも解釈できる。
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