<観光客に県境はない>
富山県の観光関係者は、「東南アジアの人は、雪を見たことがないので、立山黒部アルペンルートに非常に興味を持ってもらえる」と、手ごたえをつかんでいた。「ただし、県単独では、観光客を増やすのは難しい。小松空港、名古屋のセントレア空港、富山空港など空港が窓口となる。近い地域で連携してプロモーションしていかなければならない。富山、長野、岐阜、愛知など近くの県で密接な連携を取っていく。その県だけに来てもらうというのは、ありえない。点ではなく、面での連携が必要ですね」と、県ではなく、地域で一体となったプロモーションが必要なことを口にしていた。
海外からの観光客にとって、県境はない。国内の各観光地は、ライバル関係にあるものの、県や都市で客を奪い合うのでは、訪日2,000万人達成は、ほど遠いのではないか。
<国を挙げて歓迎できる?>
また、伝統的な日本独特の観光地や、旅館、温泉地などでは、なかなか、海外からの観光客を、諸手を挙げて歓迎できないという事情も抱えている。
国内でも人気のある温泉地の観光誘致担当者は、次のように本音を漏らす。「東南アジアからの観光客は増えていますが、うちの温泉地は、国内向けのマーケットで十分やっていける。温泉や、日本旅館の受け入れ態勢が十分に整っているかというとそうではない。海外からの訪問客を増やすためには、日本人向けの満足度をどこかで削る必要があって、ベッドのある部屋を増やすなどある意味、インバウンド(海外からの観光客の誘致)のために妥協しなければならない」と、海外からの訪問客のニーズと日本人旅行者のニーズが、完全には合致しないというジレンマを抱えている。海外の旅行者のために英語や中国語、韓国語、タイ語などを表記した案内板を出す必要性を分かっていながら、日本独特の温泉地の雰囲気を壊すのが嫌で案内板を掲げないところもあるという。
観光庁は、各省庁との連携を強化していく計画を立てているが、オールジャパンで一体となっての歓迎ムードを演出できるかどうか。まだ課題は山積みだ。
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