<海外進出は成功の兆し>
海外では、成功の兆しもある。AKB48の姉妹グループとして、インドネシアのジャカルタに進出したJKT48。現地でも日本のアイドル文化が受け入れられ、人気上昇中。日本同様、コアなファンが存在し、ステージ前で熱狂する姿が、動画サイトなどでも見られる。
「インドネシアには、人口ボーナスがあるので、ジャカルタは成功していると思います。日系企業がインドネシアに進出していて、それに合わせて、フォーマットを進出させた。日本のモノというよりも、インドネシアのモノとして地元で受け入れられている。グローバルでありながら、ローカルでもある。まさにグローカル化ですね」と、進出先にいち早くインドネシアを選択し、現地化に成功した。
日本のサブカルチャー産業は、新たな輸出産業として期待されており、経産省は、日本の伝統文化やポップカルチャーをクールジャパンとして海外に売り出し中だが、田中教授は、「アニメや漫画、ゲーム、アイドルなどのポップカルチャーに関して言えば、役所がやるのは、宣伝、広報だけに特化した方がいい。そのほかは何もやらなくていい」と辛口の提言をした。
<"交流"と社会とのコミットメント>
インターネット隆盛の時代。フィギュア、プラモデル、鉄道、パソコン、ラジオ、無線製作などコアなファン同士が、リアルの場での"交流"を求めて、東京・秋葉原には人が集まる。
会いに行けるアイドルとして、秋葉原から国民的アイドルに成長したAKB48。その人気に火が付いた要因の一つにファンとメンバーの交流の場である握手会がある。CDを1枚買えば、握手会の参加券が付いてくる。握手会がメンバーとファンだけでなく、ファン同士の交流の場となり、人気は持続した。
2008年にブレークしたAKB48だが、「その人気がいつ終わるのか?」という議論は、かなり早くからささやかれはじめていた。だが、「選抜総選挙」など、ファンの「応援したい」というモチベーションをかき立てる企画を打ち出し、その好調ぶりを今も維持している。
同時に、社会とのつながりを保ち続けたことが大きい。3・11以降、東日本大震災への復興支援プロジェクトを企画し、継続的に被災地に駆け付け、ライブを行うなど社会と関わり続けたがゆえに、「前代未聞のアイドルグループ」(田中教授)となりえた。
精神的なつながり、交流を演出し、社会とのコミットメントをどのように保ち続けるのか。デフレ脱却後、消費者の選択が多様化した時に、選ばれるかどうかの分岐点となるのではないか。
<プロフィール>
田中 秀臣(たなか ひでとみ)
1961年生まれ。経済学者。上武大学ビジネス情報学部教授。積極的な金融政策によりデフレ脱却を図るリフレ派として知られ、日銀の金融政策を批判してきた。著書に『デフレ不況 日銀の大罪』(朝日新聞出版)、『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』(講談社)。サブカルチャーにも詳しく、『AKB48の経済学』(朝日新聞出版)、『日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉』(主婦の友社)などの著書もある。
※記事へのご意見はこちら