ミャンマーを訪問していた安倍晋三首相は5月24日からの日程を終え、27日に帰国した。日本の首相訪問は1977年の福田赳夫氏以来36年ぶり。日本は同国の民主化や経済支援のため、総額910億円の政府開発援助(ODA)を行なうと表明し、インフラ整備を中心に、法律や教育など幅広い分野で支援することを約束した。
長年の軍事独裁政権下で孤立していたミャンマーは経済も停滞。経済成長著しいASEAN諸国の中でも、後れをとっていた。2011年、軍出身のテインセイン大統領による民政移管以降、経済を開放し外資の受け入れを積極的に進めている。鉱物や天然ガスなどの天然資源が豊富で人口が6,200万人の有望市場は「アジア最後のフロンティア」と呼ばれ、外国投資家たちが強い関心を寄せている。
安倍首相訪問後の5月31日、ミャンマー共和国連邦商工会議所共同事務総長エイ・ルウィン氏が福岡市で講演を行なった。同市はミャンマーを訪問した安倍首相を現地でエスコートした人物。
講演のテーマは「ミャンマーへの投資のチャンス」。同氏は講演で「1989~95年の間、日本からミャンマーへの直接投資額は世界で最も多かったが、その後の政治不安から投資は低調。現在は第7位で、とくに中国や韓国からは投資額でずいぶん離されてしまっている」と日本との関係が希薄になっていることを挙げた。その上で「ミャンマーには豊富な資源が眠っている。労働力も豊富で、製造業においても投資を待ち望んでいる。農業に適した土地を多く保有しているが、現在はそのうち15%しか活用できていない。農業への投資も積極的に行なってほしい」と今後の日本に大きな期待を寄せていた。
会場には九州各県から企業関係者、自治体関係者ら100名近くが来場。講演後には30分以上の質疑応答がなされ、ミャンマーのビジネス環境について、さまざまな質問が寄せられていた。
ミャンマーは親日国として知られており、日本がビジネスパートナーとして信頼を得ていることは間違いないが、現状では他国に大きく水をあけられている。ODAをうまく日本とのビジネスにつなげるかが課題になるが、今回の安倍首相の訪問はASEAN進出を目指す国内企業にとって、言うまでもなく朗報となるだろう。
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