鳥取発の純日本製高級鞄の挑戦―。伊勢丹新宿店の"顔"とも言える1階の高級バッグ売場で、海外ラグジュアリーバッグのなかに、「BARCOS J LINE」が肩を並べている。鳥取に本社を構える(株)バルコスは、このラインで"ジャパンブランド"の確立を目指している。この取り組みについて、同社代表取締役の山本敬氏に話を聞いた。
<バッグ生産はしない 海外で情報収集とサンプルづくり>
――サンプルをつくるだけの工場を持つメリットとは、何でしょうか。
山本敬氏(以下、山本) 弊社は、バッグを生産するための工場を持っていません。うちは流通業で、生産はやらないと決めています。昔は鳥取にも大きなアパレル生産の会社もありましたが、中国での生産が盛んになると安価な労働力を求めて受注は中国に一気に流れ、つぶれていきました。この様子を見て、怖いと。生産はその時々で適地があり、それは時代によって移り変わっていくのだろうと思っています。
生産は安くできればいいかというと、そういうわけでもありません。高付加価値を望んでいらっしゃる方は、中国製よりイタリア製の方が良いのです。安価でという話になれば、バングラデシュや、ベトナムなどの方が良いです。それは、需要によって使い分ける必要があります。
工場にサンプルを持参すれば、図面、材料、数量、納期の話だけですみます。バッグの製造は半導体のような最先端の技術が必要なわけではありませんから、どこでもできます。
ただ、普通のところはサンプルから工場でつくってもらおうとします。しかし工場は、生産の受注はほしいが、手間のかかるサンプルづくりを嫌がります。サンプルができていて、いざ生産するだけという状態になっていれば工場はやりやすいです。
また、工場は、生産に追われている時期、比較的空いている時期があります。同じグレードの工場でも、工場によってその状況は違います。ですから、サンプルを持って空いている工場を探せばいいのです。
自社工場を持つと、どうしてもそこで生産することになります。たとえば、緊急の仕事が入ってきた際に、常に空いていればできますが、そうではないことも多いです。それではクイックな対応ができません。加えて、工場ありきで縛られてデザインをしてしまい、そこからの発想でしかバッグがつくれなくなってしまいます。
――サンプル工場はいつからあるのですか。
山本 ちょうど5年前につくりましたが、当初は本当に大変でした。指示書を入れて、日本人スタッフが横について、サンプルをつくっていました。最初の1年は回らなくて、お金だけが消えていくような感覚でした。今では指示書を送るだけでつくれるようになり、現地の人間だけで回せるようになってきています。
<COMPANY INFORMATION>
所在地:鳥取県倉吉市中江 48-1
設 立:1991年5月
資本金:9,300万円
売上高:(11/12)13億3,000万円
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