電気をどうつくるか。ほとんどの原発が停止している現在、それは大きな課題の１つとなっている。原発に頼ってきた電力政策が大転換を迎え、未来に向けてどう舵を切るべきかが模索されているのだ。それにともない、これまで停滞気味だった発電の新技術が次々と盛り返しを見せ、新たな提案がなされてきている。同時に、電力を使いこなすか、という点も見直されているところだ。北九州市八幡東区東田では今、北九州スマートコミュニティ創造事業と銘打ち、エネルギーに関するさまざまな実証実験がなされている。

＜蓄電実験中＞
　電力は今後、世界的に大きな注目を集めていく分野だろうと思われる。その理由は、化石燃料の高騰と原発事故以降の原発のあり方など、不安定要素が増大しているからだ。豊かな生活は維持したいが、大量消費は時代にマッチしなくなってきているのである。本プロジェクトは、そのギャップを埋めるものであると言える。

　他にも多くの実験がなされているのだが、一言触れておかねばならないのは、蓄電実験である。電気は使うときに使うだけ発電するのがよく、溜めるのには向かない性質のモノなのだ。それゆえ、ピークカットも制度的なものや自主的な省エネを第一に考えているのである。蓄電について、ピーク時電力の足しにしたり、万が一の際のバックアップに用いるといったことも検証されている。コミュニティ内に次世代鉛蓄電池やLiB蓄電池などを配し、その活用法などを模索している。

＜スマートシティツーリズムが生まれる？＞
　発電、電気の使用、蓄電。そういった実験を重ねていくことは、それ自体の効果が第一義であるが、副次的に環境先進都市としての名誉が与えられる点も大きい。先進的な取り組みをしているがゆえに、国内はもとより海外からも視察が絶えないのだという。視察に来た方々が地域にお金を落としていってくれることも地域の利につながるし、また、視察に来た方々が、それぞれの地元で北九州を紹介してくれたら北九州市の価値も高まるだろう。環境への取り組みを見て回るエコツーリズムというものがあるが、スマートシティツーリズムという考え方も生まれるかも知れない。事実、同プロジェクトに積極的に参加しているNPO法人では、見学ツアーなどを実施して、地域を盛り上げている。そういった「楽しさ」というのも金銭的なメリットには換算しにくいが、たしかにあるのではなかろうか。

　エネルギーの地産地消を成し、楽しみながら豊かな生活を実現する。そのための実験が現在、北九州で行なわれているのである。ガスタービンコジェネであったり、再生可能エネルギーの導入であったり、使い方・制度の工夫であったりなど、実に身近な内容である。この結果を得て、早々に制度に反映できる部分も多かろう。そして豊かな生活がつくられていくのならば、それはとても良いことのように感じられる。

　北九州市は、同実証エリアに隣接している官営八幡製鉄所がつくられて以来、重工業地帯として国内外に名を馳せていった。第二次世界大戦が終わり高度経済成長期に入ると、北九州市は成長の負の側面である公害の街として知られるようになった。七色の煙が煙突から立ち上り、サビ色をした海には魚は住めなかった。そんな公害都市が、官民一体となって環境先端都市への取り組みを始めた。透明度を増していく海に希望を見、やる気があれば町が変わることを知ったのである。そして今では、世界でも稀有な「工業と環境が両立した街」として注目を集めるほどになった。近い将来、これにさらに「エネルギーベストバランス都市」という名誉が付加されることになるかもしれない。
　電力の先行きがわからないと嘆く前に、前向きに官民一体となって取り組む姿勢からは、学ぶべきところが大きい。

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＜お問い合せ先＞
北九州市環境局環境未来都市推進室
所在地：北九州市小倉北区城内1-1
ＴＥＬ：093-582-2238
ＵＲＬ：http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kankyou/file_0325.html

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