電力は今や社会に不可欠なインフラである。東日本大震災以来、日本は新たな電力のかたちを模索し続けている。しかし、原発再稼働の是非、石油高騰など、刻々と変化し続ける環境のなか、次の一手がさだまらないのが現状だ。九州大学応用力学研究所では、独自の風力発電技術でエネルギー問題の解決を提案している。主な技術は2つ。1つは風を集める技術。もう1つは風を読む技術。本特集でその技術を紹介する。まずは総論として応用力学研究所所長の大屋裕二教授に、風力発電が描く未来を聞いた。
<風力発電が再生可能エネの柱>
――太陽光、水力、バイオマス、そして風力と、さまざまな再生可能エネルギーの活用が俎上にあがっております。そんななか、風力はどのような位置づけにあるのでしょうか。
大屋裕二教授(以下、大屋) 電力全体のなかで、再生可能エネルギーの比率を30%まで高めようとする動きが震災以来続けられてきております。今はまだほんの数%しか再生可能エネルギーが導入されていませんが、このエネルギーシフトは着実に進んでいくことになると思います。今は水力発電が主ですが、30%に高めるためにはそれ以外の方法で発電しなくてはなりません。では、何が牽引役を担うかというと、風力だろうと考えております。
――風力発電が再生可能エネルギーの柱になる、ということですか。
大屋 はい。風力は太陽光と比べても圧倒的に高いポテンシャルを持っています。日本の沿岸にある風力資源は約19億kWあります。国内の電力10社が発電する能力は2億kWで、およそ10倍となります。種々の制約のため、19億kWの1割に風車導入が可能でしょう。それでも1.9億kWとなります。発電ができるところを選りすぐり、良いところだけに風車を設置したとしても、国内の電力のすべてをまかなえることになるのです。それだけの潜在能力があるのですから、30%という目標は必ず実現できる数値だと考えております。
――国内のすべての電力を風力にできる潜在能力があるとは驚きです。
大屋 超伝導の送電網を整備することができたら、送電ロスをなくすことができます。そうすれば、北海道の広大な原野で生まれた風力による電気を関東で使うことができるようになります。太陽光に注目が集まっていて、多くの事業者さんたちがそちらでビジネスを展開していますが、太陽光を再生可能エネルギーの主人公とするには日本は土地がなさ過ぎます。
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