福島第一原発事故の被害者ら14団体が6、7の両日、原発被害の全面賠償を求めて、東京電力や国と交渉した。東京の日本弁護士会館には6日、「生業を返せ、地域を返せ!福島原発訴訟原告団」や「元の生活をかえせ・原発事故被害いわき訴訟原告団」、「原発事故の完全賠償をさせる南相馬の会」、「福島原発避難者訴訟原告団」などから約150人の原発被害者らが集まり、東京電力、経済産業省、復興庁などに、「今も15万人以上が避難生活を強いられ、ふるさとで安心して生活できる見通しが立たない。加害者としての責任を認め、深刻に反省し謝罪せよ」と迫った。
「収束宣言を撤回し、福島県内10基の原発廃炉を言明せよ」、「福島第一原発からの距離で分断され、空間放射線量で分断され、そして賠償でも分断されている。線引きをやめよ」、「元の生活に戻せ」と強く要請した。
原発事故後に自殺した福島県須賀川市の農家の男性の遺族、樽川和也さん(37)は、東電が賠償金の支払いに応じながら謝罪を拒んでいる態度を批判。東電とは原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)の仲介で和解する予定。「私はお金が欲しくて(ADRセンター)に申し立てたのではない。原発事故による死者はいないと言わせないため、脱原発のため、樽川家に謝罪させるために申し立てた。農作物への謝罪文と人の命への謝罪文が同じなのはどうしてなの!『大変ご心配をおかけしました』、人が死んだんだよ、わかっているの?責任を認めたのに、なぜ会社として謝罪しないのか」と怒りをあらわにした。「俺は母ちゃんと2人でロープにぶらさがった親父を下ろしたんだよ。毎日農作業していても、1日も頭から離れないんだよ」と、言葉を振り絞るように訴えた。
「元の生活をかえせ・原発事故被害いわき訴訟原告団」の伊東達也原告団長は「『謝れ、償え、なくせ原発』は、福島県民の総意だ。樽川さんに謝罪しないと聞いて、怒りに震える。国、東電は加害者としての認識はないのか」と声を震わせた。
事故時の居住地が「避難指示区域」かどうかなどによって、避難者を「自主避難」と分断し、健康診断を含む医療サービス、損害賠償などの救済を拒否する東電の対応にも憤りの声があがった。
茨城県水戸市から沖縄県へ子ども2人で避難している久保田美奈穂さん(34)は、放射能による健康被害への不安を訴え、「全被害者、避難者が(放射能)検査を無償で受けられる制度を国としてつくれ。それができるまでは東電が費用を負担するべきだ」と求めた。家族や友人からセシウムが検出されたことをあげて、「だれが子どもの健康を守るのか。大丈夫でなかったとき、『すみません』では済まない」と訴えた。
会場から「すみませんとも言わないからな」の声が飛ぶなか、東電の担当者は「健康被害を及ぼす数値ではなかったと認識している」と無責任な回答に終始。馬奈木厳太郎弁護士が、「健康に影響を及ぼすと判断しないと、検査費用を払わないと言っているようなものだ」と批判。久保田さんは、「人間としての心がないのか。東電の対応はおかしい。体の中の放射性物質を回収しろと言っているんだよ!」
と叫んだ。
今回の原発被害者の行動は、全国の公害被害者団体が共同して、政府や公害発生企業に対し被害者救済と公害根絶を求めて1976年から続けている公害総行動の一環。6日夜には、日比谷公会堂で、1,200人が集まって総決起集会を開催。原発被害者のほか、水俣病、アスベスト、基地被害など11分野の公害被害者が全国から一同に揃い、「公害は終わっていない」「不条理、不正議への怒りを明日の行動の力にしよう」とアピールした。
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