5日、参議院本会議で、消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案(いわゆる「消費税転嫁法案」)が成立した。消費税アップへの環境がまたひとつ整備された格好だが、中小企業を中心に不安を訴える声は強い。
当初、消費税は"外税方式"が主流であったが、「総額がわかりにくい」、「"内税方式"との価格比較がしづらい」といった消費者からの声を受けて、2004年4月から、税額を算入した現在の"総額表示"が義務付けられたという経緯がある。
こうしたなか、来年4月には消費税率が8%に、再来年10月には10%になることが予定されている。消費税のアップ分を価格に上乗せすると、消費者が「値上げ」だと見るのが普通。そこで事業者の間には、消費税分をきちんと転嫁できず、実質負担せざるを得なくなるのではないかとの懸念が広がっていた。
そこで政府が考え出したのが、今回成立した消費税転嫁法案である。17年3月末までの期限付きで、消費税を転嫁していない旨の表示や、消費税分を値引きするなどの宣伝や広告を禁止し、外税方式も認めるという内容だ。消費税を円滑かつ適正に転嫁しやすい環境を整備するための相談窓口の設置や、下請けいじめを行なった企業名の公表なども予定されている。
近年、1~2回の委員会審議で可決される法案がほとんどとなっているが、この法案は衆参ともに、参考人質疑、消費者問題特別委員会など関係委員会との連合審査会、安倍総理大臣に対する質疑が行なわれるなど、重要法案並みの審議が行なわれた。
消費者庁は、たとえ「消費税」という文言を用いていなくても、「3%還元セール」、「全商品3%値下げ」、「価格据え置きセール」といった、事実上消費税と関連づけて値引き等の宣伝を行なっていると判断される表示まで禁止する方針だった。しかし、これに反発する意見が相次いだことから、禁止される宣伝・広告は、消費税との関連を明示しているものに限る、とする修正が行なわれている。
5日の参議院本会議でこの法案に賛成したのは、自民、民主、公明、新党改革と無所属のうちの7人。みんな、生活、共産、みどり、維新の各党は、中小企業の状況に懸念を示す立場から反対に回った。
すでに、消費税の引き上げを見込んで、価格の再見積もりを求められるケースや、消費税額に相当する原価低減を話題として出される事例が相次いでいるともいわれる。消費増税が予定どおり実施されるかどうかは、多少微妙な情勢となってきているが、いずれにしても、中小企業などが困らないよう、相談体制などを実効あるものとし、弱い者いじめにならないような、しっかりした態勢づくりが求められる。
× 消費税(増税分)は転嫁しません
× 消費税率上昇分値引きします
× 消費税相当分、ポイントを付与します
OK 春の生活応援セール
OK 3%値下げ
OK 消費税との関連性がはっきりしない文言
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