安倍政権が掲げる経済政策「アベノミクス」の中核となる、「大胆な金融緩和」(1月22日)、「機動的な財政出動」(2月26日)に次いで、5日に「成長戦略」の第3弾が公表され、『3本の矢』がすべて放たれることになった。
<安倍政権の成長戦略とは>
「成長戦略」の第1弾は今年4月19日に発表した「女性の活躍」を中心とするもので、その骨子は
・保育所定員を2017年度までに40万人増
・育児休業期間を3年に延長することを企業に求める
・就職活動の解禁時期を3~4カ月間後ろ倒しするよう産業界に要請
・日本版NIH(国立衛生研究所)の創設
だった。
第2弾は5月17日に発表した「世界で勝つ」で、その骨子は
・インフラ輸出を現在の年間10兆円から30兆円に拡大する
・世界大学のトップ100に10校が入るようにする
・食糧輸出を1兆円規模にする
・昨年度63兆円の民間設備投資を年間70兆円規模にする
だった。
そして第3弾は6月5日に内外情勢調査会での講演で発表され、その骨子は
・1人あたりの国民総所得水準を10年後に現在より150万円増とする(12年度は384.5万円)
・市販薬のインターネット販売を原則解禁
・今後10年間の電力関係投資を30兆円規模に拡大
・今後10年間で12兆円規模のPFIなどの事業を推進する
となっている。
第3弾はいずれも総花的な目標の羅列に終始していたことから、5日の東京株式市場は安倍首相の講演途中から、「第3弾の中味が乏しい」として失望売りが急速に拡大。終値は前日比▲518.89円の13,014.87円と、今年4番目の下げ幅を記録した。その流れは食い止めることができず、翌日の6日も前日比▲110.85円の12,904.02円、7日も前日比▲26.49円の12,877.53円で取引を終了している。アベノミクスに対する期待感は急速にしぼみ、むしろ失望感が漂い始めているようだ。
安倍政権は発足以来、「アベノミクス」を掲げて60%台後半の高い支持率を維持しており、今までマスコミも「アベノミクス」に対して懐疑心を抱きながらも、株価上昇を受けて容認する態度を取っていた。しかし、今回の株価急落を受けて、やや批判的な論調に変化する兆しを見せている。
安倍政権にとって夏の参議院選挙に勝利するためには、株価急落をいかに食い止められるかが大きな課題となってきている。
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