<アベノミクスに潜むアベノリスク>
安倍政権が昨年12月に発足して円安・株高の流れが加速し、輸出産業を中心に13年3月期の決算は好業績となった。一方、休眠状態が続いていた証券業界も「アベノミクス相場」を好機到来ととらえ、積極的に個人株主に対する投資説明会を開催するなど、久方ぶりに活況を呈していた矢先に株価の大幅な下落に見舞われることになった。
リーマンショックで大損をした一般投資家も、連日報道される「アベノミクス」に当初は半信半疑であったが、安倍政権が打ち出した「大胆な金融政策」に歩調を合わせるかのように、4月4日、黒田日銀総裁が金融緩和策を発表し、それを受けて株式相場は一気に上昇速度を早めていった。
それを裏付けるように3月の日経平均の一日当たりの出来高は32億3,482万株だったものが、4月は43億1,333万株、5月は46億6,536万株と膨らんでいった。株価が今年のピークをつけた5月22日には63億8067万株と大きく膨らんでいた。翌日の23日は、76億5,514万株となったが、株価が今年一番の大幅な下げに見舞われ売り買いが交錯するなか、ろうばい売りが拍車をかけ今年一番の出来高となった。
4月4日の株価は12,634.54円(前日比272.34円)であったものが、5月22日には15,627.26円(前日比246.24円)をつけ、僅か1カ月半で2,992円72銭と3,000円に手が届くところまで上昇した。
しかし、日本株を早めに仕込んでいた海外のヘッジファンドによる利益確定の売りと国内の一般投資家の買いが交錯していたところに、23日の朝方、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の悪化やアジア市場が軒並み下落したのを受けての株価の急落であった。
その後は前日比プラスの日もあったが、今年最高値で引けた5月22日の株価15,627円26銭に対して、6月7日(金)は12,877円53銭で、▲2,749円73銭の大幅な下げとなり、2カ月前の株価水準に戻ることになった。
7日に世界最大の年金基金で、約110兆円分の公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の運用見直しの動きや米国の金融緩和が当面続くとの見方に加え、円がドルに対して98台と円高傾向に歯止めがかかったことから、6月10日の東京金融市場は前日比636円67銭と今年最大の上げ幅を記録し13,514円20銭で引けており、株式相場は乱高下を繰り返す展開となっている。
今日、黒田日銀総裁の記者会見も予定されており、その発言に注目が集まっているが、一般投資家はあくまでも「アベノミクス相場」という官民挙げての甘い言葉に踊らされることなく、自分の財産は自分が守るという「自己責任」が強く求められている。
※記事へのご意見はこちら