内田 孝紀 准教授
風力発電にとっての最大の問題点は、思ったほど発電しないケースがあるのと、故障が多いことだ。その原因は風の読みの甘さにあると、九州大学応用力学研究所・内田孝紀准教授は指摘する。風は土地の高低、建物の有無などの状況で、いとも簡単に変化する。その複雑怪奇な風の動きを高い精度で予測する技術が、九州大学の持つ「RIAM-COMPACT®」である。
<風を読む技術は風力発電に必須>
風レンズ風車や浮体式風力発電の研究など、風力発電で名を馳せる九州大学応用力学研究所だが、実はもう1つ大きな技術を持っている。それはコンピュータソフト「RIAM-COMPACT®」(以下、リアムコンパクト)である。同ソフトは風を読むためのものだ。
風力発電機は風の力を電気に変える変換機である。その原動力は風だ。では、風が吹いている場所ならどこでも設置してよいのか、というとそうではない。風力発電に適した場所でないと、思うような電力が得られなかったり、不意な故障に見舞われたりするのである。その発電に適した場所を探すソフトが、リアムコンパクトなのである。
再生可能エネルギーのなかで、風力発電の地位は、現在、残念ながらそこまで高いわけではない。主役はやはり太陽光だ。日本は偏西風の通り道が一部かかるため、風力に適した場所は多数あるはずなのに、脇役の座に甘んじている。なぜか。それは、故障が多いことと、想定以上に発電量が伸びないことが原因なのである。リアムコンパクトの設計者であり、風の研究者でもある内田孝紀准教授は、次のように語る。
「風力発電で大事なことは、10~15年間動き続けることです。故障せず、安定して電力を生み出すために一番大事なのは、良い風と悪い風を見分けることです」。
発電に適した風を見分ける。たとえば川の流れを読むならば、流れにのる落ち葉の動きや波の様子から、ここは本流、ここは渦、ここは淀みということがわかりやすい。けれども、風は目に見えない。そのうえ、時と場合によって右からも吹くし左からも吹く。それを読み切るというのは、簡単なことではない。
「風の状況のことを"風況"と言います。風況が良い場所を探すためには、周辺の状況が大きく影響を与えます。たとえば丘があったり、ビルがあったり、広場があったりといった条件で、大きく風況は変化します。読み誤ると発電しないどころか、故障の原因にもなります」(内田准教授)。
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■九州大学応用力学研究所
代 表:大屋 裕二
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