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揺れるアベノミクス~安倍政権の現状を読む(前)
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2013年6月11日 16:56

 上がる一方だった株価が乱高下して、アベノミクスに対する懸念が出始めている。
 6月5日午後、安倍晋三首相は成長戦略を発表した。同戦略は安倍首相が「第3の矢」とする鳴り物入りの代物だ。これで5月23日をピークに下降傾向にある株価を上昇させ、7月21日の参院選での勝利に繋げるという予定だった。
 ところが戦略の発表と同時に、それまで「様子見」だった株価は急降下してしまう。昨年12月に発足以来、高支持率を維持して順調だった安倍政権だが、その運命ももはや尽きてしまったのか。
 経済ばかりではない。地方選で自民党が連敗しているのだ。5月19日のさいたま市長選(埼玉県)や同月26日の八千代市長選(千葉県)などで、自公の推薦候補が敗退した。保守王国である岐阜県でさえ、6月2日の美濃賀茂市長選で自民党推薦候補が敗れている。

sora_25.jpg 7月に予定される参院選にも波乱が生じている。その一例が6月10日に自民党が比例で出馬予定だった田島みわ氏の公認を取り消した件だ。田島氏から「一身上の都合」で出馬を辞退されたとされているが、永田町で、これをそのまま信じる者はいない。
 ゴールデンウィークが明けた5月7日、永田町から近いホテル・ニューオータニの鶴の間で、二階派のパーティーが開かれた。鶴の間は同ホテルで最も広いバンケットルームだ。会場は6,000人の支持者で埋め尽くされ、石破茂自民党幹事長や御手洗富士夫キヤノン会長などの挨拶が続いた。二階派と関係の深い杉良太郎氏も祝辞を述べている。

 このとき、田島氏は次期参院選公認候補予定者として舞台に上がっている。経歴として紹介されたのは、「会社経営者で、大河ドラマ『春日局』に出演した女優」だった。だが田島氏が1番よく知られているのは女優としてではなく、緊縛ヘアヌード写真集を出したタレントとして、である。もちろん、このときの紹介では、その経歴にはまったく触れられていない。
 実はこの頃、自民党内で田島氏擁立についての賛否をめぐる議論があった。田島氏は3年前の参院選でも自民党公認で比例区に出馬していたが、このときも、田島氏の経歴が問題になっている。
ただし当時の自民党は野党で、今回は与党。状況には雲泥の差があった。

 石破幹事長は、田島氏の擁立に難色を示したと言われている。それを押し切ったのが河村建夫選対委員長だ。河村氏の独自の判断ではない。その背後にいて「影の幹事長」とも言われる実力者・二階俊博氏の意向が働いたという。
 だがその週に発売された週刊文春5月16 日号が田島氏の「黒い交友関係」を報じて状況は一変。田島氏は同誌が発売されるとすぐさま「火消し」に走った。自民党本部に赴き、事情を説明した。だがことは重大で、参院選挙に影響を与えかねないと判断した党本部が最終決断を下した。二階氏の力をもってしても、抑えられなかったのである。

 ゴタゴタはあっても、自民党の優位は崩れない。その主な理由が日本維新の会の不振である。本来は自民党にあき足らない保守層の受け皿になるはずが、橋下徹共同代表の一連の舌禍事件ですっかり影が薄くなっている。
 そんな維新は6月6日、東京で初めてパーティーを開いた。会場はその1月前に二階派がパーティーを開いた鶴の間。ただし会場の3分の2だけをパーティー会場とし、残りをクロークとして使用した。参加した支持者は3,500人とされるが、二階派のパーティーよりはるかに少ない。
 当日は大阪から橋下氏と幹事長の松井一郎大阪府知事が駆け付けた。2人は官邸で安倍首相に面会するなど、精力的に動き回った。だがパーティー会場での橋下氏はすっかり疲れた様子。同じく共同代表の石原慎太郎氏と檀上でパネルディスカッションを行なったが、石原氏の暴走を止められなかった。一方、石原氏は老いが目立つ。憲法改正に触れたとき、「会計検査院」を「人事院」と言い間違えたほどだ。それに気づいた橋下氏がやんわりと訂正しようとしたが、石原氏は「いや人事院だ」と譲らず、「人事院があるから、国の予算は複式簿記にならない」という珍妙な持論を展開している。

(つづく)
【永田 薫】

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