自他ともに飯塚市の雄として認知され、建築・土木および生コンクリート製造販売で業界を牽引する(株)坡平産業。とくに生コン製造販売においては、福岡都市圏にも進出しており、アウトサイダーとして市場への影響力は大きい。長年にわたり同社は、福岡地区生コンクリート協同組合側から、組合加入の打診を受けてきた。だが、加入条件でお互いの主張が平行線であったため、これまで加入は実現しなかった。しかし、2年前から福岡・飯塚地区両協組の広域化の一環として、同社と福岡地区協組側との交渉が活発化してきた。「坡平産業は加入する」、「絶対、組合に加入しない」と真逆の情報が、業界内で飛び交っている。
<他のアウトサイダーの動向>
坡平産業以外のアウトサイダーの動きは、どうなのか。
福岡の有力な1社は、「坡平産業から直接話が来たよ。同社が福岡地区の協組に加入するときは、一緒に加入してくれよと打診があった。坡平産業が本当に加入するなら、弊社も加入するよ。坡平産業の組合加入で、価格の安定が確立する。喜ばしいことだ。無益なダンピング合戦が終わるだろう」と坡平産業の組合加入を歓迎する。
もう一方の有力アウトサイダーは、「うちにも坂平社長直々に打診があった。福岡地区の協組に加入時は、よろしく頼むと言われた。正直なところ、あまり気は進まないね。現状のアウトサイダーとしての活動で問題はない。価格に関しても、弊社は極端なダンピングは行なわないからね。今、組合員になるメリットはない」と坡平産業と歩調を合わすことに消極的。「組合内部が分裂していると聞いている。表立って言う組合員は少ないが、アウトサイダーの工場が加入すると、組織内が乱れるのではないかと懸念している組合員も存在するようだ。本当に、坡平産業が加入できるのか、まだまだ時間が必要だ」と冷静に分析している。
<6月末で区切りか>
現在も、坡平産業と福岡地区協組との話し合いは継続されている。同組合に近い関係者によると、諸条件で双方とも主張がぶつかっている。その1つがシェアで、もう1つが同社の契約残の買取の扱いである。
同組合のルールとして、加入時は同社が持つ契約残の案件を組合にわたして、適正価格で組合が買い取るのである。それに対して、同社は「なぜ自社の営業で獲得した案件を差し出さねばならないのか」と猛反発している。この件は、組合側も例外は認められないとの姿勢である。「坡平産業は、加入するから我々のやり方で組合活動を行ないたいと主張。組合側は、今まで築いてきた組合のルールを曲げるわけにはいかない。協同組合は、お互いを扶助する精神がある。坡平産業の手法は、弱肉強食である。その手法を持ち込むことはできないだろう」と同組合に近い関係者は現状を語る。
双方の協議は、6月末で一旦締めるという。なお、坡平産業側に取材を打診したが、断りの連絡が記者にあった。
福岡・飯塚両協組の広域化によって、1万3,000円/㎥の販売価格を定着させることでは統一している同社と福岡地区協組。だが、"シェア・契約残"など乗り越えなければならない高いハードルがあるのも事実。これらは、お互いの経営哲学に関わることであり、簡単に譲れない。生コン業界において、九州で最大の市場である福岡地区。決着の行方に注目が集まっている。
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