日本維新の会と同様に、第三極であるはずのみんなの党も、自民党の受け皿になりえていない。理由は代表の渡辺喜美氏の「独善」にある。
6月7日、みんなの党は元新宿区議の沖智美氏を栃木選挙区の公認候補に擁立することを発表した。沖氏は昨年11月に新宿区選菅に届けていた住所に居住実態がないということで区議を辞職している。そういう「前科」のある人物を代表の地元である栃木で擁立するというのは、よほど思い入れがあるらしい。渡辺氏を良く知るみんなの党の関係者はこう話す。
「渡辺さんが擁立したがるのは、まず自分より年下であること。次に自分より賢くないこと。そして自分より年齢が若い女性であること。なぜなら、こういう条件の人間なら自分の意のままに操れると思っているからだ」
実際に、今年3月に行田邦子参院議員をみどりの風から引き抜いたのも、民主党の青森選挙区の公認候補だった波多野里奈氏を4月にみんなの党に引き入れたのも、渡辺氏の独断だった。これではみんなの党は渡辺氏のプライベートパーティーも同様だ。党内では批判も出ているが、創業者の渡辺氏に表だってたてつく人はまだいない。
決め手となる受け皿がない上に、第一党が圧倒的に有利という状態。では波乱要因がないかといえば、そういうわけではない。例えば定数5の東京選挙区だ。
現在のところ下馬評では、自民党が優勢で2議席を獲得する勢いで、公明党が余裕で1議席を確保。民主党とみんなの党も1議席は保持する可能性があると言われている。ただしなぜか「共産党が強くて、4位についている」との話も聞こえてくる。その多くが組織票で浮動票が望めないのに、どうして共産党が強いとされるのか?理由はただひとつ。次期参院選は投票率が低くなるという予測があるからだ。
支持率の数字を見ると優勢なのは確実、しかし、いまひとつ盛り上がらないのが安倍政権の現状だ。それが如実に示されたのは、6月9日の夕方に行なわれた渋谷駅前での街頭演説だった。12年前の自民党総裁選では、小泉純一郎氏と田中真紀子氏がタグを組み、ひと目見ようと数万人の聴衆が集まった。駅前だけでは場所が足りず、人の波は公園通りまであふれた。今回の街演は主として都議選対策のものだが、それでも参院選に出馬予定の丸川珠代氏もいたし、安倍首相も熱弁をふるった。いわば役者がそろった状態だが、小泉時代の熱気には遠く及ばない。
「いまの安倍政権への支持には、積極的な意味は少ない。他がないからとりあえず支持しているという感じがする」。
自民党関係者すら、こうした言葉を口にするようになった。安倍政権の実態は、外因により左右されるほど危ういということが徐々に明らかになりつつある。このまま参院選へ突き進もうという安倍政権。その後で見えるものは何なのか。
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