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九州に宇宙をつくれ!ビッグバン直後の状態を再現するILC(後)
経済
2013年6月13日 15:58

<何がわかるかわからない、それほど最先端の科学>
 では、ILCでは何ができるのか。はっきりしているのは電子(または陽電子)を光速近くまで加速させ、さらにエネルギーを与えて衝突させることができる、ということだ。そこからどのような知見が得られるのか、どのような新たな法則が導き出されるのか、あるいは何もわからないのか、それさえもわかっていない。それほどまでに最先端なのである。

 それゆえ、ILCでの実験結果が人類の何かの役に立つ、ということを現段階で確定的に言える人はおそらくいない。
 ただ、実験の結果の予測はできないけれども、その設置の効果はある程度、考えることはできる。設置されたら世界の素粒子物理学における権威たちが施設に足しげく通うようになるだろうし、講演なども積極的に行なわれることになるだろう。地元への理解と協力のために、子ども向けの理科教室なども開かれるだろうし、CERNがそうであるように、一般人が利用できる科学館のようなものもできるかもしれない。身近で最先端科学に触れることによって、子どもたちの理科への興味、未知への好奇心が湧き立ち、科学のレベルが上がるかもしれない。

 また、世界各国から科学ファンたちがILCを見学に来ることもあるかもしれない。すると、「科学ツーリズム」とでも言えばいいのか、観光資源として一役買ってくれることになるかもしれない。これらはILCの本来の目的ではなく、あくまでも付帯的なものではあるが、実際にCERNではここに挙げたことは現実になっており、従って充分に現実味を持った予測なのである。
 
 また、これがもっとも大きな効果になると思うのだが、ILCで新たな発見があるたびにそのニュースは世界中を駆けめぐることになるが、そのたびに立地場所の名前も一緒に付いてまわる。誘致を実現できた場所は、科学都市として世界中に紹介されることになるのである。このブランディングこそが、もっとも大きな効果ではないかと思われる。

ilc_s.jpg

<日本に設置することへの期待>
 現在、ILCの候補地は日本からは岩手県の北上山地、佐賀県~福岡県にまたがる脊振山地、スイスのジュネーブ、アメリカのシカゴ、ロシアのドゥブナが挙げられている。趨勢を読むと、日本が手を挙げたら日本に決まると言われている。欧州は経済が不安定であること、CERNがすでにあること、アメリカは遺伝子などの他分野への注力しているということなどがあり、また、アジアにそういった先端科学施設がないこと、資金的にまかなえる国は数えるほどしかないことなどから、日本が立候補したら決まる可能性が非常に高いと言われているのである。
 
ただし、政府レベルでは何も決まっていないのが現状だ。立候補するともしないとも、費用負担をどうするのかも、どこにつくりたいのかも決まっていない。現在、立地のための地質調査、北上山地と背振山地の生活のしやすさなどの側面から調査が進められている。それをもとに、秋には何らかのアクションがあるのではないか、と噂されている。
 日本は物理の分野では世界を牽引してきた。古くは湯川秀樹氏、朝永振一郎氏、江崎玲於奈氏、近年では小柴昌俊氏、小林誠氏、益川敏英氏とノーベル物理学賞受賞者も多数輩出している。ILCは、日本にこそあってほしい施設であるし、それがあることで日本は大きく世界に科学立国をアピールできるはずだ。

(了)
【柳 茂嘉】

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