<安全なお産には、産湯と乳母が欠かせなかった>
「天使の希水」採水工場のある村内には、「乳母神社」という、久保田史郎院長(久保田産婦人科麻酔科医院)の思いを象徴するような名を持つ古い神社がある。「昔の出産は、産湯で赤ちゃんの身体を温め、乳母が産後の母親に代わって、すぐに栄養豊かなお乳を飲ませてあげていたのです。現代では乳母の代わりをミルクや糖水が担っています。産湯にはもちろん、ミルクや糖水を作るときも、きれいな水を使いたいものです。塩素で消毒してあるような水道水は避けるべきです」と久保田院長。そして、アトピーの発症にも、水道水が少なからず影響を及ぼしていると語る。
「アトピーが増えたのも、ここ20年の話です。顕著なのは、対馬や沖縄です。水道が完備されてから増えました。アトピーの方の多くは、汗で症状が悪化すると言いますし、最近では人がもともと体内に持っているカビから出るタンパク質が汗に混じり、発症させるという研究結果も出ています。他にも様々な説があるようですが、皮膚の病気の場合、ほとんど皮膚が酸性化していますから、酸性である汗を中和させるだけでも、緩和を促すことができますよ。天使の希水はpH8.2で弱アルカリ性です。自然治癒力を高めるには、ステロイドを塗るより皮膚を中和する方が大切なのです」(久保田院長)。
<天然水に入れた豆腐が腐った?>
ある日、久保田院長は水の実験を行なった。ビンの中にさまざまな水を入れ、豆腐を沈めて放置してみたのだ。すると数日後、5つのビンのうちふたつで、豆腐が腐って浮いているのがみられた。ひとつは水道水、もうひとつは天然水として市販されているものだった。「天然水といっても、決して安全ではないようですね。ゴルフ場や養鶏場、生活排水が地下水に混ざるような環境から採水されたものは、加熱殺菌して売られています」(久保田院長)。ちなみに、天使の希水に入れた豆腐は、一番最後に浮きあがったという。
<自然治癒力を取り戻そう!>
なぜ産科医が水の販売を始めたのか――そもそもは、赤ちゃんに質の良い水を飲ませてあげたいという、素朴な思いから始まったものだった。自然という豊かな懐に抱かれて、天然の恵みがいっぱい詰まった湧水は、乳飲み子にも、その母親にも優しい。しかしいつしか未来を担う子どもたちも含めて、自然治癒力を高められるような環境を残したいという思いに至るようになった。「薬ではなく、自然の力で病気を克服できるのなら、それにこしたことはありません。自然治癒力を高めれば、自力で立ち上がる力が強くなります。未来の人々が自立した生活を送るためにも、安心して飲める天然水が湧くような自然豊かな環境を、財産として残したいのです」と、久保田院長。さらに故郷の写真を指し示し、「この地にある淀姫神社、乳母神社、子安神社には、卑弥呼と、卑弥呼の息子の乳母を務めたといわれる卑弥呼の妹(玉依姫)が祀られています」と、歴史的ロマンをも仄めかす。周りは緑地で囲まれている。森林浴に適した環境も魅力的だ。いずれ、水と自然と、古代史を愉しむ人々が当地を訪れ、故郷の魅力を満喫してもらえるようになるのも、夢のひとつだ。
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