「これ以上に重要なリークは米国史上、例がない」と、1970年代にベトナム戦争に関する米国防省の秘密報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」を内部告発したダニエル・エルズバーグ氏は、今回の告発者エドワード・スノーデン氏(29)を称賛した。
<クリーンが売り物のオバマ政権の屋台骨を揺らす>
米政府がテロ対策を名目にメールなどネット上の個人情報を極秘に収集していたことが明らかになった。これは、「米国史上最大級の機密流出」であると同時に、クリーンが売り物であったはずのオバマ政権の屋台骨を揺るがしかねない大事件となっている。
オバマ政権による極秘調査が、5日の英ガーディアン紙の「米国家安全保障局(NSA)が米電話会社ベライゾンの通話記録数百万件を毎日収集」とのスクープで明らかになった。翌6日には、米ワシントンポスト紙が「NSAと米連邦捜査局(FBI)が"PRISM"と呼ばれる極秘情報収集プログラムでインターネット上の個人情報を集めていた」ことを特報している。
しかも、この電子メールや動画、閲覧したサイトなどの個人情報を集めるプログラムには、世界中にユーザーのいる、マイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブックなどIT大手9社が任意で協力していた事実も明らかになっている。
NSAは、約15ある米国スパイ機関のなかで、CIAなど他の機関を全部合わせたより多くの予算を使うと言われる盗聴機関である。最大の特徴は、あの悪名高い「エシュロン」と呼ばれる情報収集システムを持つとされている点である。「エシュロン」は、米国の国家安全保障局主導による世界のほぼ全域をカバーするアングロサクソン系諸国の国際諜報ネットワークである。UKUSAと呼ばれる米、英、カナダ、豪州、ニュージーランドのアングロサクソン5カ国の盗聴政府機関の協力で運営されている。エシュロンは、無線、衛星通信、電話、ファックス、Eメールを傍受、盗聴し、コンピューターで自動分析まで行う。1日に30億各種通信内容を傍受すると推定されている。
<前科のあるNSAとGCHQによる盗聴連携プレー>
今回の件は、人権意識の高い欧州まで飛び火し、英国ではNSAと協力関係にあるGCHQ(英国政府通信本部、国際規模の盗聴を行なう政府機関)も"PRISM"を使用していた疑いが浮上している。
実は、この両者には"前科"があるのだ。2003年のイラク侵攻の2カ月前、NSAからGCHQに、驚くべきEメールが入った。その内容は、「米英を除く、安保理の理事国13カ国の国連代表部員のオフィスや自宅の盗聴を手伝ってくれ」という依頼である。それによって集めた資料をネタに、イラク侵攻の支持、不支持を迷う理事国に揺さぶりをかけることが狙いであった。しかし、このことは、当時28歳であったGCHQの職員(中国語翻訳官)キャサリーン・ガン氏の暴露で明るみにでたのである。
現在、「エシュロン」によって、米英を除く世界各国は全て"丸裸"にされているのが現状だ。この実態に詳しい関係者のなかには「米・中サイバー戦争とか、米・ロサイバー戦争とか言いますが、レベルが違います。自分たちが、"丸裸"になっていることが分かっているので、中国、ロシアなどは文句を言うのです。我々でさえ、その気持だけは分かります。それに比べると日本人は能天気すぎますが・・・」と言う者さえいるのだ。
読者の多くも、何となく感じていたとは思うが、現実に直面して、改めてその恐ろしさに愕然としたことと思う。それにしても、1つ不思議なことがある。能天気かどうかは別にして、日本の多くの新聞がこのニュースを第1面のトップ記事にしなかった点だ。これは何か意図があるのだろうか。マイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブックなどは日本人にとってとても馴染みがある名前のはずだ。
グーグルの目的は、人類が使うすべての情報を集め、整理することだそうだが、そういう社会が行き着く先の恐ろしさに、こんなに鈍感であっていいのであろうか。
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