競争著しい再生可能エネルギーの分野。とくに、メガソーラー発電事業には多くの企業が名乗りを上げ、群雄割拠の状況が続く。本稿では、いち早く実績を積む地元企業と、これを取り巻く業界環境にスポットをあてる。
<さらなる躍進に期待>
新年度を迎えた今、ここで各地のメガソーラー発電計画の現状を見てみたい。昨年7月に固定価格買取制度が始まって以来、各種メディアは大型メガソーラー発電所計画で持ちきりとなり、「○○で××MW」、「△△で□□億円の計画」という報道が世間を賑わせた。仮に2MW規模なら、土地と発電施設の初期投資で約6億円、年間の売電収入で約9,000万円(買取価格42円で計算)が想定される。これが20年間続くため、ここからメンテナンス費用を差し引いても、残る利益は大まかに見積もって8億円。多くの企業が色めき立つのも無理はない。
しかし、現実に踏み出せた企業となると、その数は限られてくる。当初、買取価格の設定に大きな影響力を与えた孫正義氏率いるソフトバンクグループは、各地で大規模計画を打ち上げたものの、実際には、その多くが頓挫している。理由の1つは、計画から実行までのタイムスパンが長すぎたことにある。IT業界の巨人、通信業界の革命児といえど、電力の分野に必ずしも通じているわけではない。複数にまたがる各省庁との折衝や電力会社との系統連系といったノウハウは、一朝一夕に得られるものではなく、その点での不備が指摘される。また、用地買収に動いたエージェントが太陽光発電に疎く、速やかな用地買収ができなかったとの話も業界関係者から聞かれる。いずれにしろ、計画の実現に必要以上の時間がかかったため、高い買取価格で事業展開できる時期を逃し、その後の買取価格引き下げ議論のなかで、事実上の撤退が囁かれている。
巨額の資金を有する企業ですらこの状況であることに照らせば、資金力のない中小企業の進捗は推して知るべしで、資金調達から躓いた中小企業は多い。他方、取り込み詐欺や投資詐欺的な謳い文句の下で金だけを集め、その後に姿を消した例も複数報告されている。要は、資金調達能力は欠くことのできない前提条件だが、多くのノウハウを必要とする事業だけに、金だけではどうにもならない新興市場の姿がそこにはある。
もちろん、着実に進むプロジェクトもある。鹿児島市では、京セラがIHI(石川島播磨)とみずほコーポレート銀行と組み、70MWのメガソーラーを建設中であり、大分県でも大手商社・丸紅が、80MWのメガソーラー発電所を2014年3月に稼働させる見込みだ。いずれも、資金力と太陽光パネルの供給能力に裏打ちされており、今後の計画実現に不安要素は少ない。また、鹿児島の有力企業、南国殖産がこの分野に参入した例も見られる。
このように見てくると、世間を騒がせたメガソーラー発電所ブームは、特殊な技術とノウハウを積み重ねた一握りの企業(技術系)と、巨大資本をバックにメーカーと共同する大企業(大手系)に収れんされてきたように思われる。昨今、経済産業省では買取価格を引き下げる方向で議論が進んでおり、そうなれば収益性確保のために一層の技術的アドバンテージが必要になる。資金力にものを言わせる既存大手に、技術系でどこまで対抗できるのか。はたまた、その存在価値を認められ、自身も株式上場によって大きな資金力を纏うことになるのか。再生可能エネルギーを巡るレースは、ようやく第一コーナーを曲がったばかりである。
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