<バトンは加藤氏から丸山氏へリレーされた!>
伝説の編集者丸山昭氏(元講談社「少女クラブ」編集長)を囲んで、トキワ荘の語り部小出幹雄氏の進行で、水野氏、山内氏も参加のもとに行われた話の続きである。
前回、「漫画少年」には腕に自信のある優秀な若者たちが投稿してきたことは述べた。トキワ荘の住人になったのは、ほとんどがこの優秀・入選者たちである。たとえば、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、長谷川邦夫、藤子不二雄、寺田ヒロオらは「漫画少年」上位当選の常連であった。全国どこにいても、お互いに顔は知らなくても名前だけは知っていたのである。さらに、各雑誌の編集者も新しい優秀な漫画家を探すのに「漫画少年」を利用していたのだ。
トキワ荘の第1番目の入居者は手塚治虫氏である。手塚氏は、大阪の宝塚から上京した折に、加藤謙一氏が面談、発掘している。手塚氏が鞄に入れていた原稿「ジャングル大帝」を見て、その場で、即決で「漫画少年」への連載を決めている。手塚氏はこの経緯から、加藤氏を東京のお父さんと呼び、「漫画少年」以外の仕事も、東京での仕事は、加藤氏のデスクを借りて書いていた時期があった。
手塚氏はトキワ荘には1953年、完成してすぐに入居している。丸山氏は、手塚氏がトキワ荘から雑司が谷の並木ハウスに引っ越した時に「少女クラブ」の"手塚番"の辞令を受けている。この時点から、丸山氏のトキワ荘、並木ハウス三昧の日々が始まったのである。
丸山氏は寮長とも言える寺田ヒロオ氏(漫画家、トキワ荘に住み、新漫画党総裁としてメンバーから慕われた)の存在は、"トキワ荘成功物語"に欠かすことができないと回想した。
<「日本文化」を成長産業に転換できるのか!>
マンガやアニメ、食などの日本文化を海外に売り込む「クールジャパン戦略」が新局面を迎えている。人気が高い割にはビジネスに結びつかなかった反省を踏まえ、官民連携の試みが本格化する。そのために平成25年度予算案では、出資金を500億円用意し、官民ファンドをつくる方針が打ち出されている。日本の文化を海外に売り込む「クールジャパン戦略」では、昨年度補正予算と今年度の予算で計840億円以上が計上されることになる。政府はこれまでも「クールジャパン」を旗印に、日本ポップカルチャーを海外に紹介する見本市などを支援してきた。しかし、目立った経済的効果はないまま、海外の日本ブームの息切れが指摘されている。ただ、売れる文化を支援するだけでなく、裾野に広がる作り手を応援し、次世代の担い手になる若者を育てることが重要である。
<24時間切磋琢磨できる寮生活の意義を再考!>
記者が、とても興味深かったのは、丸山氏がトキワ荘を旧制高校の寮生活にたとえた点である。中国の有力大学は、今でも北京大学、清華大学を始め全寮制で、学生はその何事にも代え難い大きな価値を評価している。目覚ましい躍進で、今話題の秋田の国際教養大学も全寮制である。旧制高校同様、思春期を過ぎて大人へ向かう一番大事な時期に、優秀な仲間とともに24時間切磋琢磨できることは、人格形成、キャリア形成において、とても重要なことかもしれないと改めて感じた。
次回のフォーラムは秋に予定、「漫画~アニメ~クールジャパン」にまで展開予定である。また、6月22日(土)には、南長崎・トキワ荘跡地で、第1回「トキワ荘塾&交流会」が開催される。興味ある読者、"まんが少年・少女"は足を運ばれるとよいと思う。
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