15日、難燃マグネシウムによる新型発電を研究する東北大学・小濱泰昭教授が、久留米市で講演し、「5年以内にビジネス化のメドをつける」と語った。小濱教授は、「燃料(Mg)耕作型社会構想」を提唱し、マグネシウム燃料電池を太陽光でリサイクルするといった循環型社会の実現を目指す。講演では、マグネシウム発電の研究を始めるに至った経緯から始まり、その内容や他の発電方法との比較、研究・開発の進捗状況、今後の展開などについて説明が行なわれた。
本来、流体力学の専門家である小濱教授は、宮崎県日向市でエアロトレインの研究を行なっている。そのエアロトレインの車体を軽量化するために使われていたのが難燃マグネシウム。思いつきで塩水をかけてみたところ、燃え尽きることなく電気を起こし続けたのが出発点という。マグネシウム燃料電池の開発は古河電池(株)(本社:神奈川県横浜市保土ケ谷区)が行ない、2012年11月に実用実験に成功。福島県いわき市から宮城県仙台市までの100kmを、小濱教授自らがマグネシウム発電を原動力とする3輪電動バイクで走破した。
すでに、小濱教授の研究は、テレビ、雑誌といったメディアでも紹介されており、商品化については、海外も含めて複数の方面から期待が寄せられている。ただし、スケールメリットがない難燃性マグネシウム合金は、1kgあたり2,000円と高価なことが大きな課題。まずは非常用電源として商品化を図り、量産効果によって生産コストを下げていく考え。一方、1,200度の熱源が必要とされるマグネシウム燃料電池のリサイクルには、太陽熱集光装置の技術を持つ三鷹光器(株)(本社:東京都三鷹市)が協力。太陽熱が最も得られる砂漠を持つ中東諸国へのアプローチも行なっている。
8番目に多い元素であり、海のなかに1.82兆トンもあるマグネシウムを新たなエネルギーへ――。
岩手県釜石市出身の小濱教授は、11年3月11日の東日本大震災および福島第一原発事故を受けて、原子力発電の非効率性、処理できない核廃棄物がコスト計算されていない点やテロ行為の標的となる危険性を指摘し、マグネシウム発電の実用化を成し得なければ、「孫たちのためにも死にきれない」と語る。講演を聴いた久留米市民からは質問が相次ぎ、「夢のエネルギーとして1人でも多くの人に語り伝えたい」といった声も聞かれた。
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