今後の日本の自然エネルギーへのシフトに、太陽光発電の普及は不可欠。なかでも、企業などが工業跡地や自治体の持っている遊休地に建設する大規模太陽光発電所(メガソーラー)の拡大が、カギを握る。日本での事業用、非住宅用の太陽光発電は、まだ約2割程度にとどまっている。昨年7月、京都府、群馬県でいち早くメガソーラーの運転を開始したSBエナジー(株)が、日本の自然エネルギー事業をリードしている。孫正義社長は昨年7月、運転を開始した京都市の「ソフトバンク京都ソーラーパーク」のセレモニーで、「自然エネルギーこそ最終的な答え」と、地球と人類が共生することのできる再生可能エネルギーの重要性を説いている。SBエナジー(株)が設立時に掲げた全国10数カ所以上にメガソーラーを設置するという目標と、総出力200メガワットの達成が、現実味を帯びてきている。
<農地法など課題も残る>
ソフトバンクがメガソーラーの構想を打ち立てた2011年の「自然エネルギー協議会」で、孫正義社長は「自然エネルギー事業は、雇用創出の宝庫でもある。多くの事業者が手を挙げてくれるのが望ましい」と語っている。遊休地の有効活用、パネル設置、架台や系統接続のための電柱増設などの工事、運転までの過程で、遊休地のままであれば、生まれなかった経済効果を生み出している。
ただ、さらなる普及拡大には、多くの事業者の参入が欠かせず、そのためにはクリアしなければならない課題もいくつか残っている。
土地確保に関して、農地法も障壁の1つだ。「今後、さらに事業者が参入しやすいように、農地法、工場法などの規制緩和をしてもらわないといけない。制度を見直してもらうように働きかけていく。そこを見直せば、事業者がもっと参入する余地が出てくる」(SBエナジー広報室)と、現行法では、農地のメガソーラーへの転用はできず、規制緩和をさらなる普及拡大への第一の改善点と見ている。
<固定買取価格は引き下げ>
また、12年7月にスタートした再生可能エネルギーの固定買取価格制度によって、多くの新規参入事業者が出てきたが、太陽光発電にかかる設備投資費用は普及拡大とともに年々下がっているため、買取価格も下がることになる。すでに認可を得ている施設に関しては20年間固定での買取になるが、新規参入に関しては引き下げられた価格が適用される。4月以降の認定分から、非住宅用で42円から37.8円(税込)に引き下げられる見通し。新規参入する事業者にとっては、引き下げはマイナス要因となる。引き下げられた後に設置したメガソーラーでも安定的に利益を上げられるかどうかが、長期的に太陽光発電事業を継続、拡大するためのポイントとなる。
<技術向上とコスト削減>
京セラ、三菱電機、パナソニックなど太陽光パネルを製造するメーカーによる技術向上、コスト削減も、今後のさらなる太陽光発電普及に欠かせない。それとともに、太陽光発電施設の運転開始までには、パネル設置だけでなく、系統に接続するための電柱の増設、保守・メンテナンス、発電能力を低下させないための除草、敷地の警備など継続的に発電するための手間もかかる。長年実用した際にどの程度の経年劣化があるのか、未知の部分もある。
日本のエネルギーシフトは進んでいるものの、自然エネルギー先進国の欧州に比べると、まだまだそのスピードは遅いという。「普及のペースはドイツに比べると10数年は遅れている」との見方を示す専門家もいる。太陽光パネルの技術的な向上とともに、インフラ整備、設備改修などの"経験"も積んでいかなければならない。
<自然と長く共生する>
3.11の福島原発事故をきっかけに、ソフトバンクの自然エネルギーへの取り組みは第一歩を踏み出した。孫社長は、京都ソーラーパークが運転を開始した昨年7月、「長い目で見れば、再生可能エネルギーは一番、発電コストが安くなるのではないでしょうか。長く、地球と人類が共生できる自然エネルギーこそ最終的な答え」と述べている。
東日本大震災後、2年を経て、ソフトバンクの「自然エネルギー普及のきっかけづくり」、「目標200メガワット」という2つの公約は、実現へと着実に近づきつつある。しかし、日本の自然エネルギーへのシフトは、まだ始まったばかりだ。
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