チッソが排出したメチル水銀によって水俣病になった未救済患者で、水俣病被害者特措法に申請して非該当とされた48人が、原因企業のチッソと国、熊本県を相手取って、国家賠償などを求めて新たな訴訟を起こすことが明らかになった。原告・弁護団が6月18日熊本市で記者会見した。熊本地裁に20日、提訴する。
原告は、40代から90代の48人(男性22人、女性26人)でカラス曲がりや感覚障害など、水俣病特有の症状がある。熊本県29人、鹿児島県18人、福岡県1人。特措法の対象地域外が29人、生年月日による年代対象外が3人。全員が水俣病不知火患者会の会員。請求金額は1人あたり450万円。
2005年10月に提訴されたノーモアミナマタ国賠訴訟(第1次)では、10年3月、水俣病をめぐる集団訴訟で、国が初めて訴訟上の和解に応じる基本合意が成立。翌11年に終結、国がそれまで「被害がない」としてきた地域や年代にも被害があることを認め、一時金、医療費、療養費を被告らが原告約3,000人に支払うことになった。ノーモアミナマタ1次訴訟の広がりのなかで、水俣病被害者特措法が制定、施行され、新潟県を含め約6万5,000人が申請した。
特措法には、「対象地域」(熊本、鹿児島両県の場合、不知火海沿岸の9市町の全部または一部)や、1969年11月末までに生まれたとする年代による「線引き」があるため、「非該当」とされ、救済されない患者が多数存在する。また、水俣病への差別・偏見を恐れて申請しない患者もいる。特措法の申請は2012年7月末で打ち切られた。今度の訴訟はノーモアミナマタ第2次国賠訴訟となる。原告・弁護団によると、今後、年内に第2陣、第3陣を提訴する予定。すでに、特措法「非該当」となった提訴希望者は約200人いて、特措法申請していない人で救済を求めている患者も約150人いるという。
園田昭人弁護団長は「特措法上の解決がなされればよかったが、行政に期待できないなら、司法の場で解決する場をつくるしかない」と述べた。
原告団長の飯尾正二氏(55)は、「不知火海沿岸で(水俣病の)症状がある人全員を救うために、そのさきがけとして48人が結束してあたりたい」と語った。
原告の松岡奈緒美さん(42)は、年代対象外の1人。両親、兄、姉は特措法で救済された。「親から特措法に申請をすすめられ、『なぜ私が水俣病?』と思いながら検査を受けたら、水俣病の症状にあてはまり、『これが水俣病なのか』とショックだった。家族全員が(メチル水銀に汚染された)同じ魚を食べ、同じ症状が出ているのに、私1人だけ認められないのは不可解。私たちの年代はまだ働いており、他人の目が気になり、水俣病だということを隠さないといけない。迷いに迷ったが、『苦しんでいる』と誰かが言わないと救済されない」と訴えた。
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