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水俣病は終わっていない~今も続く切り捨て行政
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2013年6月19日 15:52

 再び水俣病をめぐる集団訴訟が提起されることになった。1956年5月1日に水俣病が公式に発見されてから57年。「公害の原点」と言われる水俣病がまだ解決をみない。裁判を通じて、行政による被害者切り捨て政策、「線引き」のあやまりがあらためて問われることになる。

0606_no_minamata02.jpg 69年6月に提訴された水俣病第1次訴訟以来、3次にわたる水俣病訴訟がたたかわれ、2005年にはノーモアミナマタ国賠訴訟が提訴された。記者は水俣病第3次訴訟の途中で水俣病問題の取材を始めて以来、水俣病患者が救済を求めて提訴する場面を幾度も取材してきた。取材するたびに、「救済されていない患者はまだいる。水俣病は終わっていない」と再認識させられてきた。
 6月18日、新たに「ノーモアミナマタ第2次国賠訴訟」を提訴することを明らかにした原告患者の姿に、これまで救済を求めて裁判でたたかわなければならなかった患者らの姿がだぶった。
 劇症患者の症状のイメージから水俣病だと気付かず、「自分が水俣病のわけがない」と思う患者は多い。水俣病への差別などから、水俣病と名乗りでない患者もいる。意を決して申請しても、行政によって「お前は水俣病ではない」と切り捨てられる。医師が水俣病だと診断しても、行政にとっては違うのだ。今回提訴する原告団長の飯尾正二さん(55)も、「水俣病の症状があっても3月まで仕事をしていたので、周りの目が気になって、現在に至った」と語る。
 被害を拡大した国の責任が認められたにもかかわらず、国は被害実体を明らかにするための健康調査さえしていない。水俣病の実像、被害の範囲さえ確定できていないのが実情だ。

 過去の裁判で、メチル水銀を含んだ工場排水を垂れ流した加害企業チッソの責任(73年7月、1次訴訟判決)、一つの症状だけで水俣病であるという判断(85年8月、2次訴訟福岡高裁判決)は早くから判決で確定していた。確定判決ではないが、87年3月に熊本地裁で国の責任を認める判決が言い渡されている。2005年に提訴された「ノーモアミナマタ第1次訴訟」では、水俣病訴訟史上初めて国が和解に応じ、それまで国が「被害はない」としてきた地域・年代にも被害があると認めた。ことし4月には最高裁は水俣病認定義務付け訴訟で、国の「1977年判断条件」が求める複数の症状の組み合わせがない場合にも、水俣病と認定する余地があると判断した。

 園田昭人弁護団長は「救済する制度はあるが、いびつになっている」と指摘する。
 水俣病1次訴訟では、チッソとの補償協定により加害企業の責任で被害者を救済する制度がつくられたが、認定基準という「線引き」で被害者は大量に切り捨てられた。同3次訴訟では、切り捨て政策の転換を求め、95年の政府解決を引き出し、1万2,000人以上が救済された。ノーモアミナマタ訴訟では、水俣病被害者特措法が2009年7月制定され、新救済制度もつくられ、約6万5,000人が申請した。
 行政による救済制度があっても、なぜ救済されないのか。第1に、国は認定基準を変えようとしない。本来被害者を救済するためにつくられた最初の枠組みを機能させず、切り捨てるための基準にしているといえる。第2に、特措法では、対象地域や年代という新たな「線引き」を持ち出し、多くの患者を切り捨てた。国は加害者の一人だ。加害者が、救済対象者を選別する仕組みがそもそもおかしい。12年7月には、日本弁護士連合会や患者団体の反対を押し切って、申請受付打ち切りも強行し、門戸まで閉じた。

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 ノーモアミナマタ1次訴訟原告団長(水俣病不知火患者会会長)の大石利生さんは、6月6日、東京で公害被害者が総結集した集会でこうよびかけていた。「被害者が自分たちで自分の言葉で被害を語らなければ、救済されない」。
 水俣病は、国とチッソによる被害者切り捨ての歴史であり、患者たちが国家権力を相手にしたたたかいの歴史だった。そのなかで水俣病救済の法と制度は、つくられてきた。救済されない被害者がいる限り、水俣病問題は終わらない。
 今度こそ国は、「救済を受けるべき人々があたう限りすべて救済される」ように姿勢を転換し、早期救済を図るべきだ。

【山本 弘之】

▼関連リンク
・あすノーモアミナマタ第2次提訴へ~水俣病特措法対象外の48人


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