花の都・パリ。そこでフランスやドイツの企業を相手に孤軍奮闘しているコンサルタントがいる。ナガタグローバルパートナーズの永田公彦代表だ。世界最大の化粧品会社など国際企業をクライアントに抱え、そのアジア進出戦略、現地法人の経営や業務改善など、アジア人という大きな利を生かした提案をなし、クライアントの成功を生み出してきた。その活動は日経新聞などのメディアからも注目されてきた。
「ヨーロッパは成熟した民主主義の文化を持っています。日本も見習うべきところは多くあろうかと思います」
永田氏がまず指摘したのは日本の出生率の低さだ。少子化が進めばいずれ国としての生産能力が下がり、国力が落ちてしまう。経済の混乱は社会保障の仕組みも打ち壊して国としても末期的な状態に陥ってしまう可能性がある。そのひどい未来を回避するために子どもを増やすことは、国家的な責務であるという。日本の合計特殊出生率は1.41(2012年)。一方でフランスは1.96(同)。日本もせめてフランスの水準にまで高めなくては、将来に希望は薄い、と永田氏は語る。
「フランスは結婚、離婚の仕組みが明解です。もし結婚がうまくいかなくても財産分与などの紛争に陥りにくく、スムーズに完結できる法律と行政手続きの仕組みがあります。つまり結婚しやすい環境ができあがっているのですね。また、日本には結婚か独身かの2つしかないですが、フランスにはそれに加えて事実婚というものもあります。事実婚の仕組みが子どもを産みやすくしているという側面もあります」
仕組みの問題と同時に、女性が社会進出しやすい環境が整っているという点も永田氏は指摘する。休職制度、子育て支援、働く女性に対する家族や社会の認識など、女性が働きやすい環境があるため、常に自立した社会人として活動できる。子どもがいても男性と同じように働けるため、安心して子どもを産むことができるのだ。
「事実婚で生まれた子どもも、子ども全体の半数程度いると思われます。当たり前のこととしてさまざまな婚姻の形が認められ、うまく機能しています。見習うべきところはありますね」
続けて永田氏は日本の労働力について提言をする。
「やはり移民をさらに受け入れる必要があると思います。日本国内で労働力を確保できなければ、日本で働きたいという方を海外から呼び込むことも重要だと思います。経済活動の基本はマンパワーです。どれだけすぐれた技術があっても、それを作り売る人がいなければ廃れてしまいます。移民も真剣に考えるべきだと思います」
欧州では長い歴史のなかで移民の受け入れを積極的に行なっており、そのことが国力の安定につながっているという。労働市場の開放と流動化が日本の維持には大切なのではないか、と永田氏は言う。このままでは日本の未来は暗い、新たな仕組みを用いなくてはならないとも。
話はほかに日本の企業戦略としてのアジアやヨーロッパなどへの海外進出、日本人がもつ伝統的価値観の重要性などにも及んだ。ここで紹介しきれなかった分は今後、機会を見つけて紹介していきたいと思う。
永田氏は最近就いた北九州市立大学の特命教授として、世界で活躍できる国際人を育て増やしていきたいと意欲満々。世界の潮流や企業現場でおきる現実を授業で取り上げたり、海外の企業でインターンシップに参加する学生を増やしたりすることによって、グローバル人材の育成と拡大を目指す。また、アジアや欧州のスペシャリストとして、九州地場企業の海外進出や国際人材の育成や確保などもしてゆく。
違った価値観を、海外の手法を、その考え方を、ぜひ福岡の地に落としていってほしい。
<プロフィール>
永田 公彦(ながた・きみひこ)
宮崎県で高校時代を過ごし、西南学院大学、リヨン経営大学院を卒業、リヨン第二大学非常勤講師(1998~2000年)、日本経済新聞レギュラーコラムニスト(Net版2007~10年)、JTB本社、フランス企業の役員等を経て03年に独立し、現在に至る。
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