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脱原発・新エネルギー

省エネルギーとエネルギーの効率化(後)
脱原発・新エネルギー
2013年6月20日 07:00

 2011年3月11日。原子力の安全神話が脆くも崩れ去ったあの日。日本は再度エネルギーに関する問題を突きつけられることとなった。原子力発電をすべて廃止してクリーンで安全なエネルギーを抽出すべしとの声が高まっているが、いわゆる再生可能エネルギーを一気に拡大するには、時間的、経済的、技術的な課題が横たわっている。それよりも、再生可能エネルギーの拡大と並行して、省エネルギーとエネルギー効率の向上を進めていくことが望ましいことは素人でもわかる。今回、省エネルギーとエネルギーの効率化にスポットを当てて検証してみる。

<発電の高効率化>
 電源別発電電力量の実績(出典:電気事業連合会)から見ると、2011年度での年間発電電力量(10電力会社合計)は9,550億kWhとなった。東日本大震災の影響で原子力発電の長期停止で比率は11%にダウン。それに代わる火力発電の増加で媒体別に見ると、天然ガス40%、石炭25%、石油等14%となり、合計79%が火力による発電なのだ。

gs.jpg 発電の仕組みをおさらいすると、大きく分けて4種類ある。最もポピュラーなのは1831年にイギリスのファラデーが発見した電磁誘導の原理を用いた発電方法。要は、コイルに対して何らかのエネルギーで磁石を回転させることで、電気を発生させるものである。仕様や方法はさまざまだが、原理は至って簡単で、その多くは水蒸気をタービンに吹き付けその運動エネルギーを電気に変えているだけである。水蒸気を生み出すために、石炭、石油、ガスを燃やせば火力発電。ウランの核分裂エネルギーを利用すれば原子力発電となっているだけである。
 ほか、水力発電は水が落ちるエネルギーで水車を回して電力を得ており、風力は風の力を利用して発電している。ほかの3つの発電方法として、電池、燃料電池、そして太陽光発電がある。

 要は、電力会社が一括して火力発電を行なうという概念からそろそろ脱却して、民間レベルで発電を行なう本格的な時期が来たということだ。日本は世界に名だたる工業国家で、自動車、家電、重電機など世界トップクラスを誇っている。そんな企業群が「省エネ」「高効率」を持つ次世代発電の開発に、遅れをとっていることはない。

 「ガス・コンバインドサイクル発電」は、原子力発電の2倍のエネルギー効率を持つと言われる。ガスタービン発電と蒸気タービン発電を組み合わせた発電法である。液化天然ガスを気化させてガスを燃焼させ、その噴射力で軸を回転させる。特筆すべきは、燃焼後の約600℃の排熱を再度利用することにある。排熱をボイラーに送って蒸気を発生させ、高圧、中圧、低圧で蒸気タービンを回転させて電気を生み出すのだ。ガスタービンと蒸気タービンの合成により、同じ量の燃料ではるかに大きい電力を得ることができる。加えて家庭でも使う天然ガスを用いるので、クリーンなエネルギーであることが頼もしい。(六本木にある六本木ヒルズ森タワーは、地下にこのガス・コンバインドサイクル発電を設置している。東京電力から電力の供給はなされておらず、逆に震災直後の電力不足のなか、東京電力へ電力供給を行なったことが話題となった)。
 ガス・コンバインドサイクル発電は、それでも40%近い熱エネルギーを捨てている。さらにエネルギーのロスをなくしてしまおうという発想で生まれたのが、「コ・ジェネレーション」である。電気と熱の両方を同時に利用するシステムで、電気を生み出しながら、そこから生まれる熱を活用しようというもの。とくに原発事故の後、電力会社への傾注から離れ、自家発電のために製造企業に問い合わせが殺到しているのも見逃せない。

 よくCMで目にする「エネファーム」についてだが、発電する原理は、水の電気分解の逆である。都市ガスやLPガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気をつくり出す。さらに、発電の際に発生する熱を捨てずにお湯をつくり、給湯に利用。エネルギーをフルに活用するシステムである。また、産業用・工業用のエアコンは従来の電動ヒートポンプタイプからガスヒートポンプに切り替えている。電力消費量は10分の1に減少させ実に9割減少させた。

 このように、日本企業の工業力の粋を結集すれば、コントロールが難しく放射能汚染の心配がある原子力発電に頼る必要もなくなるだろう。身近なところでの照明のLED化や200Vの普及に加えて、高効率自家発電と熱効率アップで、11年度の9,550億kWhの電力量が減少することを願いつつ、電力の安定供給と省エネ効果を期待している。

(了)
【道山 憲一】

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